看護実習の指導者が怖いあなたへ|学生が帰ったあと、指導者がしていたこと


看護学生のころ、実習で一番怖かった看護師さんがいます。看護師になった今は、あの人がなぜあんなに厳しかったのか、少し分かるようになりました。

私は実習指導者ではありません。精神科病棟で働く看護師で、実習生さんが来ると、指導者の横で一緒に関わっています。だから、学生さんが帰ったあとの指導者の姿も見ています。

この記事では、怖い指導者に当たった学生時代の実習と、看護師になった今、指導者の横で見ていることを書きます。読み終わるころには、指導者の厳しさがどこから来ているのか、質問に答えられなかったときにどうすればいいのか、そして、どこからが耐えなくていい指導なのかが分かると思います。

今まさに人格を否定するような言葉を向けられている人は、先に「厳しい指導と人格攻撃の境目」の章を読んでください。

明日は何を聞かれるのか、眠れなかった夜

准看護師学校に通っていたころ、ある病院の検査室で実習をしました。そこにいた看護師さんが、私の実習生活で一番怖い人でした。

実習期間中は、「明日は何を聞かれるかな?」と心が休まりませんでした。体は疲れているのに、緊張感からずっと離れられず、眠りも浅かったです。

それでも、教科書や事前学習を見直したり、どんなことを聞かれるか頭の中でイメージトレーニングをしたりしていました。

一方で、完璧に答えて、あの怖い看護師さんに「すごい」と思わせてやりたい、という野望?も抱いていました(笑)。

事前学習のやり方については、精神科実習向けの記事ですが、精神科実習の事前学習で押さえたい6つのポイントにまとめています。

検査室の「怖いベテラン看護師」

その看護師さんは、昔ながらの、自分にも他人にも厳しい感じのベテランでした。

私たち学生にも容赦はありませんでした。「この処置の根拠は?」「どうしてこうするか分かる?」と次々に質問してきて、答えられなければ厳しい追及が飛んできます。

まさに、針のむしろの上に乗っているようでした。

怖い人の態度が変わった日

でも、私たちのグループは協力して、事前学習を頑張りました。そして、一人が質問に答えられなかったときは、ほかのメンバーが助け舟を出して代わりに答えるようにしました。

そうすると、その看護師さんの態度が軟化しました。つまり、少し優しくなってきたのです。

「もっとここも勉強したらいいよ」 「こういうこともするんだけど、見学してみる?」

そんなふうに声をかけてくれるようになりました。怖い人からそんな声をかけられたので、私たちはうれしかったです。頑張った甲斐があったと思いました。

一人で完璧に答えて「すごい」と思わせる、という私の野望とは、ちょっと違う形でしたが(笑)。

同じグループの仲間がいるなら、一人で全部答えようとしなくていいと思います。

「怖い」の反対は「無関心」

看護師になった今、あの看護師さんのことを考えると、見え方が変わりました。

看護というのは、臨床に出てから痛感しましたが、チームワークです。だからこそあの看護師さんは、私たちがその大切さを学んだと思って、態度が優しくなったのではないかと思います。

基本的に、臨床の現場は忙しいです。だから、学生さんは適当にあしらって、仕事の邪魔にならないようにいてほしい、と考えている看護師も多いのではないかと思います。

あの看護師さんは厳しかった。でも、そこには責任感があったのではないかと思います。ベテランとして、指導担当として、看護師のたまごを育てなくてはならない、といったような責任感です。

また、処置の場は、患者さんとダイレクトにかかわる場でもあります。ミスは許されません。

厳しく質問してくるということは、少なくとも学生のことを見ている、ということでもあると思います。

私が「根拠は?」と聞かない理由

ただ、私自身は、学生さんに「根拠は?」と冷たく聞くことはありません。

「どうしてこうだと思いますか?」と、質問しながらも導く形で聞いて、だいたい最後は私が答えを言います。

なぜか?を理解してもらうことが大事であって、厳しくしてお互いに嫌な思いを抱く必要はないと思うからです。

学生時代のつらかった経験から、私が実習生さんとの関わりで決めていることは、看護実習がつらい人へ。介護福祉士だった私が経験したリアルな話にも書いています。

質問に答えられなかったときの返し方

答えられなかったときは、素直に「分かりません。勉強不足ですみません」と言ってくれればいいと思います。

臨床でも、素直さは大事です。知ったかぶりをして、自分の判断や憶測で勝手なことをすると、インシデントにつながってしまいます。知っていることは知っている、知らないことは知らない、と正直に言える人は大丈夫だと思います。

「分かりません」と言って、その場で指導者さんが教えてくれたら、それでいいです。

もし「じゃあ課題だね」と言われたら、帰ってから調べて、次の実習日に「帰って調べてみたんですが、こういうことでしょうか?」と伝えてみてください。レポート用紙などにまとめて提出するのもいいと思います。

ここまでできれば、満点だと思います。

厳しい指導と人格攻撃の境目

厳しい指導にも、越えてはいけない線があります。私は、それは人格攻撃だと思っています。

たとえば、課題をやってこなかったのなら、それは本人が良くないです。ただ、体調が悪かったなど、何か事情があったのかもしれません。だから責めすぎは避けるべきだと思いますし、本人ではなく引率の先生に伝える、という方法もあります。

問題は、そこからヒートアップしすぎて、人格を攻撃しはじめたときです。たとえば「親の顔が見てみたい」「どんくさそう」「学校でも成績悪いんじゃない?」といった言葉です。

これは絶対にアウトです。

もし、こういう言葉を向けられているなら、一人で抱え込まずに引率の先生に相談してください。指導する側から見ても、それは先生に伝わるべき話です。

実習生さんが病棟にいることの意味については、精神科実習が怖いあなたへにも書いています。

学生が帰ったあとのナースステーション

今の病棟で、実習指導を担当している看護師さんが、真剣な顔をして学生さんの記録を読み込んでいる姿を見たことがあります。

その看護師さんの勤務時間は、もう終わっていました。そろそろ帰らないのかな、と思って、私は声をかけました。

「お疲れ様です。まだなにかありますか?」

「いや。先に上がってください。お疲れ~」

明るい声でした。

学生を指導したからといって給料が上がるわけではありません(私の職場の場合です。前の職場でも手当はつかなかったと思います)。通常業務をこなしながらなので、負担は大きくなります。病棟の看護師なら誰もができるわけでもありません。

はっきり言って、ボランティアの要素が強いと思います。

でもその看護師さんは、真剣な顔で記録を読んでいました。しかも、自分の勤務時間が終わったあとに。

学生のころの私は、指導者のこういう姿を知りませんでした。あの検査室の看護師さんにも、学生が帰ったあとの時間があったのだと思います。

あなたの指導者が怖く見えるのは、それだけ一生懸命に指導してくれようとしているからかもしれません。怖くて眠れない夜は、私にもありました。それでも、あの実習で「見学してみる?」と声をかけてもらえた日のうれしさは、今でも覚えています。

実習先の指導者と看護師は、あなたの頑張りを見ているはずです。実習で学んだことは、きっと将来役立ちます。応援しています。