施設看護師に転職する前に【元介護士が語る、一緒に働きやすかった看護師】
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施設で働きやすい看護師かどうかは、技術ではなく、「介護職が安心して報告できる人かどうか」で決まっていました。
給料や仕事内容は、求人票を見ればわかります。でも、働きやすさを一番左右する「介護職との関係」は、求人票のどこにも載っていません。
私は介護福祉士として老健で6年働き、グループホームの夜勤やデイケアも経験してから、看護師になりました。介護職の側から看護師を見て、いまは看護師として介護職と一緒に働いています。
この記事では、介護職だった私が出会った「一緒に働きやすかった看護師」と「心を閉じてしまった看護師」を、実際のエピソードで振り返ります。施設への転職を考えている看護師さんの参考になればうれしいです。
「なれるよ」と言ってくれた看護師さん
老健時代、忘れられない看護師さんがいます。私に「看護師になれるよ」と言ってくれた人です。
その人は、偉そうなところがまったくありませんでした。介護職が医療のことをわかっていなくても、責めることなく、優しく教えてくれました。
そして何より覚えているのは、入浴介助にも、排泄介助にも、当たり前のように入ってくれたことです。
他の看護師の中には「それは介護の仕事」と、やりたがらない人もいました。その中で、職種の線を引かずにケアに入るその人の姿を見て、介護職だった私は「この看護師さんはすごいな」と思ったのです。
医療技術に感動したのではありません。線を引かない姿勢が、信頼になっていました。
介護職だった私が「助かった」看護師
働きやすかった看護師さんを思い返すと、共通点があります。
- 報告を最後まで聞いてくれる。 途中で遮らず、まず受け止めてくれる人です。
- やったことに「ありがとう」を言葉にしてくれる。 たったこれだけで、次も報告しようと思えました。
- 処置の理由を、一言添えてくれる。 「なぜこれをするのか」を簡単に説明してもらえると、介護職も納得してケアに関われます。
- 介護職の観察を、馬鹿にせず尊重してくれる。 医学的な言葉で説明できなくても、「気づき」として扱ってくれる人です。
まとめると、「介護職が安心して働けるかどうか」。この一点です。
知識が多い看護師よりも、相談しやすい看護師に、私は何度も助けられてきました。
心を閉じた瞬間①:正しかったのに、一緒に働けないと思った
逆のエピソードも書きます。
発熱の前、シバリング(悪寒でふるえている状態)が出ている利用者さんに、同僚の介護士が誤ってアイスノンでクーリングをしてしまったことがありました。ふるえが出ているときのクーリングは、一般的に避けるべきとされています。ただ、介護職はそうした知識を教わる機会がほとんどありません。
そのとき、ある看護師は激怒しました。「こんなことも知らないの?」と、一方的に責め立てたのです。
指摘の内容は、医学的には正しかったと思います。それでも私は、「この看護師とは一緒に働けない」と思いました。
誰にでも、知らないことはあります。それは介護でも看護でも同じはずです。正しさではなく、伝え方が、信頼を壊すことがあるのだと知りました。
心を閉じた瞬間②:報告できなくなっていく
介護職が利用者さんの異変に気づいたとき、看護師のように観察項目がパッと浮かぶわけではありません。根拠をうまく説明できないまま、それでも「何かあってからでは遅い」と思って報告に行きます。
そのとき、看護師の反応ひとつで、介護職の心は開きもすれば、閉じもします。
- 「本当?」「えー?」と、否定形で受けられる。ほしかったのは「そうなんだね。わかった、見てみよう」でした。
- 報告の途中で「それより熱はある?」と遮られる。「なんで?」「どうして?」を連発される。まるで実習生と指導看護師のようで、報告のたびに緊張するようになります。
- 「どうしてもっと早く報告しなかったの?」と責められる。
責められた介護職はどうなるか。「怒られるくらいなら、様子を見ておこう」と思うようになります。これでは、異常の早期発見にはつながりません。
そして、決定的だったのは「介護の人にはわからないと思うけど」という一言です。介護職を一段下に見るその言葉で、報告以前に、その看護師と関わること自体を避けたくなりました。
施設では、圧倒的に介護職の数が多く、利用者さんと最も長く、密接に関わっているのも介護職です。看護師よりも先に変化に気づくことは、めずらしくありません。介護職は、看護師にとって貴重な情報を持ってきてくれる人なのです。
報告が来なくなるということは、看護師が自分の目と耳を失うことと同じだと、私は思います。
看護師だって、同じ思いをしているはずなのに
ここで、看護師さんに思い出してほしいことがあります。
看護師だって、医師に報告するときは緊張します。必死に報告しているのに、「は?」「なんで?」「そんなことよりバイタル測ったの?」と返されて、傷ついた経験のある看護師は少なくないはずです。
されたら嫌なことを、なぜ自分は介護職にやっているのだろう。
介護職と看護師、両方を経験して、私はそれが不思議でなりません。
看護師になった私の、正直な話
偉そうに書いてきましたが、看護師になった私自身の告白もしておきます。
介護士のころ、おむつ交換で衣類が汚れていたら、洗濯しても便が残らないように、一度下洗いをしていました。でも看護師になった今は、それをやってくれる介護士さんがいるので、「あとお願いします」と言うようになってしまいました。
介護士だった自分が見たら、どう思うだろう。反省する点です。
一方で、看護師には他にやるべき医療処置がたくさんあり、時間の使い方を考えると仕方ない面もある、とも思います。入浴介助に入ることも、介護士のころより減りました。それは職種の違いでもあります。
だからこそ、心がけていることがあります。偉そうにならないこと。自分にできることは、それが介護の仕事であっても、できるだけ自分でやること。それだけは手放さないようにしています。
グループホームの夜、看護師は心強かった
グループホームで夜勤のアルバイトをしていた時期もあります。当時の私はまだ介護福祉士でした。
そこは私服勤務で、パッと見では誰が介護士で誰が看護師かわからないような、家庭に近い環境でした。状態の悪い方は多くありません。それでも、便が出ていないとき、持病の心不全が悪化したような症状が出たとき、看護師はとても心強い存在でした。
その施設は看取りもしていました。グループホームでの看取りは、在宅での看取りに近いイメージです。夜、亡くなりそうなとき、不安なとき、オンコールで駆けつけてくれる看護師がいる。それがどれほど心強かったか。
施設で看護師に求められているのは、高度な技術の披露ではなく、「いてくれる安心」なのだと思います。
転職前の見学で、見てほしい2つのこと
もし施設の見学や面接に行く機会があれば、求人票に載っていないこの2つを見てみてください。
- 看護師が、入浴や排泄のケアに入っている姿があるか。 職種の線引きがきつい施設かどうかが、ここに表れます。
- 介護士が看護師に報告している場面の空気。 報告が遮られていないか。「ありがとう」が聞こえてくるか。
短い見学でも、現場の空気は意外と伝わるものです。
まとめ:施設は、介護職が主役の場所
職種を超えて大切なのは、技術よりも、連携する力なのかもしれません。介護職から情報を集める力。他職種とつながる力。
施設は、介護職が主役の場所です。介護職とどう関わるかは、転職後の働きやすさを大きく左右します。
介護職だった私を、何度も助けてくれたのは、知識が多い看護師ではなく、相談しやすい看護師でした。
あなたがもし施設で働くことになったら、介護職にとってのそういう看護師になってほしい。そして、あの「なれるよ」と言ってくれた看護師さんのような人が、一人でも増えてほしいと思っています。
もしあなたが施設への転職を考え始めているなら、求人票の条件だけでなく、「看護師と介護士の関係性」も見学や面接で確かめてみてほしいと思います。自分では聞きにくければ、転職エージェントに代わりに聞いてもらうこともできます。