精神科看護師の夜勤リアル【急性期と何が違うか】
精神科の夜勤って、怖くないの?
そう思っている人は多いと思う。私も転職前、そう思っていた一人だ。
急性期病院で夜勤をこなしてきた私が、精神科病院に転職して感じた「夜勤のリアル」を、包み隠さず書いていく。
急性期と精神科、夜勤の体制はどう違う?
まず、数字で比較してみよう。
私が経験した急性期病院の夜勤は、54床に対して看護師2名+看護補助者1名という体制だった。
現在の精神科病院は、60床に対して看護師2名。補助者はいない。
数字だけ見ると「人が少ないのに患者数が多い。大変じゃないか」と思うかもしれない。
でも、実際はそうじゃなかった。
急性期の夜勤は、モニターが鳴りっぱなしだった。急な入院も入る。補助者さんがいても、一瞬も気が抜けない夜が続いた。
精神科の夜勤は、モニターがほとんどない。メインの仕事は1時間ごとの見回りと、頓服薬の対応、患者さんの話を聞くことだ。2名体制でも、比較的余裕を持って動ける。
体制の「数」よりも、何をするかのほうが、しんどさに直結している。
精神科の夜勤、実際のタイムスケジュール
準夜勤(16時〜翌1時)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 16:00 | 申し送り |
| 17:30 | 夕食の見守り・与薬・下膳 |
| 〜19:00 | おむつ交換。遅出スタッフが退勤。看護師2名体制へ |
| 19〜20:00 | 見回り・患者さん対応(まだ起きている患者さんからの訴えが多い時間帯) |
| 20:00 | 眠前薬の配薬・おむつ交換 |
| 21:00 | 消灯。1時間ごとの見回り開始。頓服対応 |
| 0:30 | 深夜スタッフへ申し送り |
| 1:00 | 終業 |
19時以降、スタッフが2名に減ってからが正念場だ。患者さんはまだ起きていて、いろいろな訴えがある。「話を聞いてほしい」「眠れない」「頓服がほしい」——複数が重なると、2名では手が足りなくなることもある。
深夜勤(0時30分〜9時30分)
| 時間 | 内容 |
|---|---|
| 0:30 | 申し送り |
| 1:00〜 | 1時間ごとの見回り・頓服対応 |
| 5:00〜 | おむつ交換・起床対応・お茶の準備など |
| 6:00 | 点灯。患者さん対応が本格化 |
| 〜7:00 | 胃ろう注入・車いす誘導・食堂への誘導 |
| 7:00 | 看護助手が来て朝食準備 |
| 7:30 | 看護師が来て軽く申し送り |
| 8:00 | 朝食・配下膳・見守り |
| 8:45 | 日勤スタッフへ申し送り |
| 9:30 | 終業 |
深夜勤の前半は静かだ。見回りと頓服対応が中心で、落ち着いて動ける時間が続く。しんどくなるのは5時以降。患者さんが起き始め、一気に動きが増える。朝の介助・食事介助と怒涛の展開になる。
見回りのリアル——「静かな夜」だけじゃない
精神科の夜勤は静かだ。それは本当のことだ。
でも、見回りの懐中電灯を持って病棟を歩くとき、「何もないといいな」と思いながら歩いている自分がいる。
実際に経験したことを、いくつか書く。
ベッドの異変に気づいたとき
入院したばかりの患者さんの部屋を見回ったとき、ベッドのそばに不審なものが目に入った。すぐに状況を確認し、対応した。あの瞬間の緊張感は、今でも忘れられない。
暗闇の中の人影
消灯後、食堂の電気が消えているはずの時間帯。暗闇の中に人が座っていた。近づいてみると、体格のいい男性患者さんだった。昼間と表情がまるで違う。不満をぶつけてきて、手に持った水筒を投げるようなしぐさをした。身の危険を感じた瞬間だった。翌朝、何事もなかったかのようににこにこしている姿を見て、複雑な気持ちになった。
突然追いかけてくる患者さん
見回りのたびに声をかけていた患者さんがいた。「大丈夫です」とだけ答えて、目はギラギラしていた。何度目かの見回りのとき、突然大声を出して追いかけてこられた。
急性期と精神科——「怖さの種類」が違う
精神科の怖さは、急性期とは種類が違う。
急性期は「急変・死」への恐怖だ。バイタルの変化、急な心停止、急変コール——常に「最悪の事態」と隣り合わせだった。
精神科は「予測不能な人間」への恐怖だ。さっきまで穏やかだった人が、次の瞬間どうなるかわからない。また、身体的に健康な患者さんも多く、体格のいい男性もいる。こちらが危害を加えられるのではという緊張感もある。自傷行為を発見したときの、自分自身が受けるショックも大きい。
どちらが怖いか、ではない。怖さの質が違うのだ。
転職してわかった「精神科夜勤のギャップ」
思ったより静かだった
正直に言う。精神科の夜勤は、思っていたより静かだった。
一般のイメージでは「精神科=怖い・何が起こるかわからない」だと思う。もちろんヒヤリとする場面はある。でも、調子が悪くて落ち着かない患者さんや、他の患者さんへの危険がある患者さんは、**「保護室」**という施錠された個室に入っていることが多い。
一般病棟に出ている患者さんは、ある程度落ち着いている人がほとんどだ。
認知症ケアは精神科でも同じ
意外だったのは、認知症の患者さんへの対応が多いことだ。
昼夜逆転・帰宅欲求・転倒防止のセンサーコール——介護施設や一般病棟で認知症ケアをやってきた人なら、すでに慣れた場面ばかりだ。
今の職場で認知症ケアに慣れている人は、精神科の夜勤でも十分対応できると思う。
先生が話しやすい
これは転職して驚いたことのひとつだ。
急性期では、医師に報告するとき緊張した。話しかけにくい先生、融通が効きにくい先生もいた。
精神科の医師は、話を「聴く」ことを専門にしている人たちだ。そのせいか、報告・相談がしやすい先生が多い印象がある。私が実習で精神科を回ったとき、「何かわかったことがあれば教えてくださいね」と先生から声をかけてもらったことを今でも覚えている。あの感覚が、現場でも続いている。
もちろん、すべての先生がそうではない。でも、「医師への報告が怖い」と感じている人には、精神科は働きやすい環境かもしれない。
毅然とした対応が必要な場面もある
精神科の患者さんの中には、依存的になりやすい人や、躁状態で攻撃的になる人もいる。
優しく寄り添うだけでは対応できない場面もある。しっかり線を引いて、毅然と対応できる「強さ」も、精神科看護師には必要だ。
まとめ:こんな人に精神科の夜勤は向いている
最後に、私が感じた「精神科の夜勤に向いている人」をまとめる。
- 急性期の「急変・モニター対応」に消耗してきた人
- 認知症ケアの経験がある人
- 医師とのコミュニケーションにストレスを感じてきた人
- 「話を聴く」ことが苦にならない人
- 予測不能な状況でも、落ち着いて対応できる人
精神科の夜勤は、楽ではない。でも、しんどさの種類を選べる。
急性期とは違う専門性が、精神科にはある。身体の急変ではなく、人間の心と向き合う夜。それは、逃げでも妥協でもない。
「精神科で働く」という選択は、自分に合った場所で、自分の力を発揮するという、立派なキャリアの判断だと私は思っている。