精神科看護師はきつい?【急性期と介護を経験した現役ナースが感じた、本当のしんどさ】


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「精神科って、きつくないですか?」

結論から言います。きつい時は、やはりあります。でも、急性期のきつさとは種類が違います。一つは、認知症の高齢者の介護で体にくるきつさ。もう一つは、患者さんとの関係性で消耗するきつさです。

私は介護福祉士として働いた後、看護師になり、急性期病院で2年半あまり、療養病棟で数か月働いてから精神科に転職しました。循環器、呼吸器、内分泌——内科系を幅広く経験し、看護技術は一通り身につけました。

この記事では、精神科で働いて感じた「しんどさ」と「怖さ」、介護福祉士の目から見た体のきつさ、身体拘束に感じた抵抗、きつい時に私がしていること、そして転職前に確かめておけばよかったことを、正直に書きます。

読み終わるころには、精神科で働くと、どんな場面できついと感じ、どんな場面で怖いと感じるのかが、具体的に分かると思います。それが分かれば、自分にやっていけそうかどうかを、転職する前に考えることができます。


精神科に転職した理由

精神科に来る前、私がいちばんきつかったのは、仕事と家庭の両立でした。

急性期にいたころ、子どもが保育園に入り、発達の指摘を受けました。転園することになり、新しい環境に慣れさせなければならない時期でした。本来なら、そばにいてやりたかった。朝の準備を一緒にしてやりたかった。でも、前残業のある職場に、早く出なければなりません。

出勤するとき、子どもは寝ていました。帰宅するとき、子どもは寝ていました。夜勤明けは眠くて、自分のことで精いっぱい。保育園の送迎も、お風呂も、食事も、寝かしつけも、パートで働いている妻にほとんど一人でやってもらっていました。

子どものために働いているはずなのに、子どもとの時間が持てない。「何のために働いているんだろう」と思うようになりました。

そのころのことは、こちらに書いています。

子どもの寝顔しか見られなかった。それでも、あの日々を否定できない。

そんな時、准看護師学校の同期から「うちの精神科、定時で帰れるよ」という話を聞きました。それが転職の決め手でした。

もう一つ、正直な動機もあります。仕事のできる先輩でさえ「どう対応すればいいかわからない」と言っていた、精神疾患を持つ患者さんを、自分がうまく対応できたらかっこいいのではないか——そんな思いもありました。身体疾患だけでなく、心の病も看ることができれば、看護師としての知見が広がると考えたのも理由の一つです。


精神科のイメージと、現実のギャップ

精神科といえば、統合失調症やうつ病の患者さんを想像する人が多いでしょう。私もそうでした。

しかし実際に働いてみて、まず驚いたのが認知症高齢者の多さです。施設や家庭で「もう見られない」と言われたハードなケースの方が、次々とやってきます。易怒性、暴力、暴言——そういった問題行動で行き場を失った方たちです。

保護室に入り、精神薬を服用することで、ぼんやりしたり、ADLが一時的に低下することもあります。転倒リスクが高まり、骨折や硬膜下血腫につながることもあります。正直に言えば、認知症高齢者が本当にいるべき場所は精神科病院ではないと思う場面も多いです。これは現場の偽らざる本音です。


体のきつさは、認知症の方の介護から来る

私の病棟では、仕事の半分以上を認知症の方の介護が占めているのではないかと思います。

特にきついのは移乗です。転倒防止のために、床にマットレスを敷いて寝ている認知症の患者さんがいます。下肢筋力が低下しているのに、認知症のためにそれが理解できず、ベッドだと立ち上がって歩こうとして転倒してしまう。だから床マットにしているのですが、その人を立たせて車いすに乗せるのが重労働です。立たせるというか、抱え上げるというか……。とにかく腰にきます。

だいたいそういう方は、全般的に介護が必要です。おむつ交換も食事介助も必要になります。食べられなくなったら点滴が始まり、それでまた時間がとられます。そのせいで、他の患者さんとの時間が取れなくなります。認知症の方のケアで、統合失調症やうつ病の方のケアの時間が圧迫されているように感じます。一般の精神疾患と認知症を分けて看る方が効率的ではないか、と思うこともあります。

同僚の看護師も、身体的な負担が「きつい」と言っています。コルセットや腕のサポーターをしている人も多いです。若いのに腰を痛めている人もいます。

介護施設よりも、厳しい環境

私は介護福祉士として働いていたころも、身体介護が中心でした。もちろん腰にもきたし、重さはありました。でも、フットレストが外れる車いすやリフトなど、介護のための設備が整っていたので、それほどの重労働ではありませんでした。患者さんにとっても優しい環境だったと思います。

急性期では、看護技術を使うことが中心で、身体介護は看護補助者さんが中心になってしてくれていました。

今の私の病棟は、看護補助者さんが少なく、器具や設備も古いものです。たとえば車いすは、フットレストが外れないものです。施設よりも厳しい環境で、介護度の高い方を看ていかなければならない。そこにきつさがあります。

(これは、私が今いる病院の場合です。精神科病院がどこもこうだというわけではありません。看護補助者さんの人数や設備は病院によって違うので、転職を考えるときは、見学で確かめてみてください。)

介護の経験は、精神科で役に立っている

それでも、介護福祉士として培ってきたことは、とても役に立っています。

やはり移乗です。脳梗塞の後遺症で片麻痺のある患者さんの場合、ベッドから車いすへの移乗は、健側を軸にして行います。逆の方向から移乗すると、余計な力がいって大変ですし、危険です。何より患者さんが怖がります。私が移乗を担当したあと、患者さんが「安心した」と言っていたと、同僚から聞いたことがあります。

移乗が怖いと、どうしても移乗させる回数が減ります。そうなると、車いすに移って離床して過ごす時間が少なくなり、廃用症候群になる可能性が上がります。施設だったら、まず起こして座らせて、ということをすると思いますが、病院だとなかなかできません。そもそも時間がありません。

それでも私は、できるだけ離床してもらうようにしています。患者さんも喜んでくれます。心苦しいのは、私がいないとなかなかそうできないことです。環境的な限界だと思います。

「これは看護じゃなくて介護だ」と思ったら

急性期にも認知症の患者さんはいて、現場の大きな負担になっていることは知っています。でも、そういう方は「治療ができない」と、だいたいすぐに退院になります。紹介状やサマリーを読んでいると、「強制退院となった」という言葉によく出会います。そういう方が、こちらに来るのです。

急性期から来たら、「こんなのは看護じゃなくて介護だ。施設じゃないか」と思ってしまうかもしれません。

その通りです。でも、これが現実です。急性期や施設で、暴力などの問題行動で「見られない」と言われた方が、ここに来ます。私たちは、そういう方を看ています。

急性期と比べて体が楽になったこと、楽にならなかったことは、こちらに書いています。

精神科看護師は楽って本当?【急性期から転職した私が感じた現実】


精神科ならではのしんどさ

一般科では、その人の「疾患」が中心になります。しかし精神科では、その人の「内面」との関わりが中心となります。

双極性障害で躁状態に転じており、激しい興奮状態で一方的に要求を突きつけてくる患者さんもいれば、うつ状態で、最悪の場合、自殺を企図する患者さんもいます。

以前、希死念慮のある患者さんが、まさかと思うような方法で自傷行為に及び、転院となったことがありました。入院中は穏やかに過ごされており、予想できなかっただけに、アセスメント不足だったのではと深く落ち込みました。

退院支援の難しさも、精神科特有のしんどさです。身体疾患と精神疾患を複数抱え、介護サービスからも受け入れを断られ、施設にも入れず、本人は状況を十分に理解できないまま不満を募らせる——そのようなケースはざらにあります。患者さんの感情に巻き込まれず、自分自身を客観的に見られないと、なかなかきついです。


「怖い」は本当か?

男性の自分でも、怖いと思うことはあります。突発的な暴力、予想できないタイミングで危害を加えられる瞬間。警察から搬送されてくる患者さんを前にした時の緊張感。

ただ、暴力に至る前には何らかのサインや兆候があることが多いです。何度も入院している患者さんであれば、状態のいい時を知っているので、「今は大変ですね。でも、いつものあなたではないことを知っています。必ず良くなるから頑張りましょう」とケアすることができます。

それでも対応できるのは、チームで動いているからです。CVPPPという精神科ならではの対応技術を身につけることで、自分も患者さんも守ることができます。衛生面で非常に困難な場面に対応しなければならないとき、理不尽な言葉を浴びせかけられるとき、一人だったら到底対応できません。でも、仲間がいるからなんとかなっています。

精神科は怖い——それは正直あります。でも、怖さはあるけど大丈夫、という心構えで毎日を乗り越えられています。

暴力のリスクと、その備えについては、こちらに詳しく書きました。

精神科転職が怖い人へ|急性期出身看護師が語る暴力リスクの現実


身体拘束に感じた抵抗

精神科に来たばかりのころ、身体拘束には大きな抵抗がありました。ピネル(拘束具)などで患者さんの自由を奪うことに、どうしても納得がいかなかったのです。

でも、それはきちんとした知識がなかったからでした。

身体拘束は、どうしようもない時の最終手段です。それをしないと患者さんの命を守れない場合にのみ行います。そして、常に評価し、最短で終わらせるように努めます。

今は、命を守るためには仕方ないのかと思うようになりました。それでも、いい気持ちはしません。自分がされたら嫌だからです。

人の自由を制限できる場所で働くことについては、介護時代の経験とあわせて、こちらに書いています。

鍵を持つ側にいるということ【介護から精神科へ、権限と倫理の話】


看護技術が落ちる不安

急性期から精神科に移る人が気になるのが、看護技術のことだと思います。採血やルート確保の機会は、急性期に比べるとはっきり減りました。一方で、精神科だからこそ鍛えられたものもあります。

実際に何が落ちて、何が身についたかは、こちらに書きました。

急性期から精神科に転職したら、看護技術はどうなったか


きつい時、私がしていること

きつい時は、やはりあります。大体が患者さんとの関係性です。

そんな時は、同僚や先輩に話をするようにしています。話してみると「私も」という返事が返ってくることが多く、自分だけではないのが分かって安心します。

また、特定の出来事でストレスがかかった時、それは大体、改善や対策が必要だと感じた時です。そんな時は、問題点と、とるべき(もしくはとってほしい)対策をA4一枚程度の文書にして出しています。ネガティブに抱え込むのではなく、提案書という形で吐き出すことで、モヤモヤが形になるので、割とすっきりします。

あとは、ジムに通ってトレーニングをしています。体を動かしてストレスを発散するのは、介護福祉士のころからの習慣です。


精神科のやりがい

私がいた一般科では、亡くなる患者さんも多かったです。死亡退院が日常でした。

精神科では、それが少ないです。入院時は自分で食事もとれず、点滴をしていた方が、見違えるようによくなって退院します。エレベーターホールで「お大事に。また何かあったら来てくださいね」と笑顔で送り出す瞬間が、本当に嬉しいです。

出口の見えなかった困難事例が、なんとか退院できた時の達成感も格別です。ただ、すぐ再入院になることも多いです。「またですか(笑)」というのも、病棟では日常茶飯事です。それもまた、精神科らしい日常です。


転職前に確かめておけばよかったこと

私は精神科に、何も知らずに入りました。漠然と、怖い患者さんがいて、暴力もある程度あるのだろう、くらいにしか思っていませんでした。そういう人は多いのではないかと思います。

でも、暴力は「ある程度」で済ませていい話ではありません。日本精神科病院協会が会員病院に行った調査(2013年度、615病院が回答)では、職員が患者さんから受けた暴力は1病院あたり年に約8件。そのうち約9割が、看護師・准看護師・看護補助者に向けられたものでした。一方で、CVPPPの研修を修了した職員がいる病院は、約6割にとどまっていました。少し古いデータですが、暴力への備えは病院によって差がある、ということです。

精神科で数年働いた今なら、入職前に次のことを確かめておきたいと思います。

1. 暴力への研修が、どのくらいあるか

私の病院では、院内の委員会がそれぞれ研修を開いていて、研修そのものは頻繁にあります。その中で暴力を扱うのは、「行動制限委員会」と「医療安全委員会」の研修で、それぞれ半年に一回です。ただ、この二つも毎回暴力に特化した内容というわけではなく、ほかのテーマのこともあります。

それよりも勉強になったのは、院外の研修に行かせてもらったことです。CVPPPの研修は、その最たるものでした。院内の研修がどのくらいあるかだけでなく、院外の研修に行かせてもらえるかどうかも、聞いておきたいところです。

精神科の暴力が怖かった私がCVPPP研修で学んだこと

2. 男性看護師が何人いるか

精神科は、一般科よりも男性看護師が多いです。私が前に勤めていた一般科の病院は、全体で男性看護師が私を含めて二名だけでした。

でも、ほかの精神科病院で働いたことのある同僚は、「ここは男性看護師は少ない方だよ」と言っていました。精神科の中でも、病院によって差があるということです。興奮状態の患者さんへの対応や移乗など、人手と力が必要な場面は多いので、病棟の男女比は聞いておいて損はないと思います。

3. 認知症の方の割合と、看護補助者さんの人数

先ほど書いたように、私の病棟では仕事の半分以上を認知症の方の介護が占めています。どんな患者さんが多い病棟なのか、看護補助者さんは何人いるのか、移乗のための設備はあるのか。体のきつさは、ここでかなり変わると思います。見学に行ったら、車いすやリフトなどの設備も見てみてください。

4. 評価の仕組み(ラダー制度があるか)

昇給やボーナスの査定がどう決まっているのかも、今の病院では曖昧です。給与規定があれば見せてもらえばよかったと思います。自分の評価がどのようになされているかは、やはり気になるからです。

結局これは、評価の仕組みの話だと思います。看護師のラダー制度を導入している病院なら、もっとはっきりしているかもしれません。私が前に勤めていた病院は、日本看護協会のラダーを取り入れていて、それに基づいて評価がされていました。日本精神科看護協会が作った精神科看護独自のラダー(日精看版ラダー)もありますが、私の今の病院では導入されていません。ラダー制度があるかどうかも、入職前にチェックしておきたいポイントです。

どれも、なかなか入職前には考えが及ばないところだったと思います。

転職エージェントを使わずに転職した私が、あとから「聞いておけばよかった」と思ったことは、こちらにもまとめています。

転職エージェントは必要か【使わずに転職した看護師の本音】


精神科に向いている人、向いていない人

精神科に向いているのは、患者さんのペースに合わせて待てる人、その人の内面に興味を持てる人です。一方で、感情的に距離を置ける「ドライさ」も、実は精神科では必要な力です。向き不向きは最初から決まっているわけではなく、私自身も働く中で変わっていきました。

向いている人・向いていない人のパターンについては、こちらに詳しくまとめています。

精神科看護師に向いている人・向いていない人


少しでも興味があるなら、飛び込んでみればいい

精神科は、確かに特殊な世界です。しんどいことも、怖いことも、正直にあると言いました。

認知症の方の介護で体にくるきつさ。患者さんとの関係性で消耗するきつさ。突発的な暴力への怖さ。身体拘束に感じた抵抗。どれも、私が実際に感じてきたことです。ここまで読んで「それなら自分にもやっていけそう」と思えたなら、精神科はあなたに合っているかもしれません。「やっぱり自分には無理そう」と思ったなら、それも転職する前に分かってよかったことだと思います。

でも、一般科では経験できない「その人の内面と向き合う看護」がここにあります。身体疾患だけでなく、心の病も看ることができる看護師は、確実に視野が広くなります。

迷っているなら、まず一歩踏み出してみてください。いつでも辞めることはできるのですから。

かつての私がそうだったように、飛び込んでみれば、想像と違う景色が待っているかもしれません。


やりがいも大変さも、両方正直に書きました。「自分もこういう働き方がしたい」と思った方がいれば、次は「自分に合う職場かどうか」を確認する段階です。

精神科への転職を具体的に考え始めたとき、一番困るのは「実際のところどうなのか」という情報が表に出てこないことだと思います。求人票には書いていないことの方が、本当は大事だと思います。暴力への研修や評価の仕組みのように、入職前には聞きにくいこともあります。実際のところは、現場で働いてみないとわかりませんが、転職エージェントを使うと、こうした内部情報を面接前に確認してもらえます。転職に結びつかなかったとして、話を聞くだけでも、自分の状況や選択肢が整理されるというメリットがあると思います。

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精神科転職に関する記事は、こちらのページに不安の種類別でまとめています。

精神科転職を考えているあなたへ【現役ナースが書いた記事まとめ】

(追記:2026-10-23 認知症の方の介護による体のきつさ、身体拘束、きつい時の乗り越え方、転職前に確かめておけばよかったことを追記しました)