精神科看護師の日勤リアル【急性期から転職した私が感じた、空気の違い】


「精神科の日勤って、実際どんな感じなんだろう」

転職前、私もそう思っていました。精神科への転職を考えたとき、仕事内容はなんとなくイメージできても、日々の空気感までは想像できませんでした。

この記事では、急性期病院から精神科に転職した私が感じた「日勤のリアル」を書きます。スケジュールの話だけでなく、急性期との空気の違い、最初に戸惑ったこと、そして気づいたことまで、正直に書きます。

精神科への転職を考えている方、特に急性期や介護施設からの転職を考えている方に読んでもらえると嬉しいです。

朝、ナースステーションに入った瞬間の話

急性期病院で働いていたころ、ナースステーションに入ると最初に耳に入ってくるのはモニターの音でした。複数台が同時に鳴っている。その音の中に、重症患者さんの存在があり、死期が近い患者さんの存在がありました。張り詰めた空気が、そこにはありました。

精神科に転職して、初めて日勤に入った朝のことを覚えています。

ナースステーションに入ると、特に音はありませんでした。早く来た日勤スタッフと夜勤スタッフが話している声。ナースステーションのそばの食堂から、食後にテレビをゆっくり見ている患者さんの姿が見えました。モニターはあります。ただ、出番は稀です。

同じ「病院の朝」なのに、空気がまるで違いました。

救急車のサイレンの話【小さな、でも大きな変化】

急性期で働いていたころ、外から聞こえてくる救急車のサイレンの音に敏感でした。

サイレンが近づいてくると、緊張しました。そのまま通過すると、ホッとしました。「来なかった」と。

救急車のサイレンが聞こえるということは、新規入院が来るかもしれないということです。「また帰れない……遅くなる……」という軽い絶望感が、音とともに押し寄せてきました。

今は違います。

精神科に転職してから、救急車のサイレンを聞いても、あのころの気の重さはありません。「うちには来ない」と、看過できるからです。

些細な話かもしれません。でも私にとっては、転職してよかったと感じる場面の一つです。

1日のスケジュール【私の病院の場合】

あくまで私の病院の一例です。病院によってスケジュールは異なります。参考程度にご覧ください。

時間内容
8:30出勤・夜勤者からの申し送り
9:00バイタル測定・服薬管理・ラウンド
10:00患者さんとのコミュニケーション・記録
11:30昼食準備・食事介助・服薬確認
13:00休憩
14:00カンファレンス
15:00午後のラウンド・記録
16:30申し送り準備
17:00夜勤者への申し送り・退勤

急性期と比べて、残業はほぼありません。定時で帰れる日がほとんどです。

急性期との一番の違い:コミュニケーションが「主役」になる

急性期では、日勤はバイタル測定から始まります。患者さんとのコミュニケーションは、観察項目の一つ、バイタル測定のおまけのような位置づけでした。

精神科では違います。

朝、患者さんのそばに行くとまずコミュニケーションから始まります。「昨夜眠れましたか」「今日の調子はどうですか」。その会話そのものが、看護です。

最初は戸惑いました。「これでいいのか」と思いました。何か処置をしなければ、何か明確な業務をこなさなければ、という感覚が抜けなかったからです。でも精神科では、患者さんと言葉を交わすこと自体が、れっきとした治療的関わりです。

「何もしない」時間の正体

急性期では、分刻みで動いていました。常に次の業務がありました。

精神科に来て最初に驚いたのは、「何もしない時間」が多いことでした。

患者さんが歯磨きや洗面をするのを、ただ見守っています。うつ状態の患者さんは時間がかかることがあります。話し始めるのを、待っています。「こんなに何もしなくていいのか」と、居心地の悪さを感じました。

でも実際は、何もしていないわけではありませんでした。

見守りながら、観察しています。「昨日より表情が暗い。何かあったのか。そういえば申し送りで、他の患者さんとのトラブルがあったと聞いた。さらに精神状態が悪化する可能性がある。無理しないように声をかけよう。話を聞いて、思いを解放してあげた方がいいかもしれない」「眠れなくてしんどそうだ。医師に報告して、薬剤調整が必要だろうか」。

待ちながら、考えています。それが精神科の「見守り」の正体でした。

双極性障害の患者さんから学んだこと

転職してまだ間もないころの話です。

一人の患者さんが話しかけてきました。よく話す方で、こちらが言葉を挟む間もなく、会話を一方的に主導していきます。話がなかなか終わらない。途中から主治医への不満が始まりました。

介護の現場では、認知症の方が興奮されたとき、傾聴しながら少しずつ話題を別の方向へ誘導していくのがセオリーでした。でも私はそのときその知識もなく、ただ訳も分からず話を聞いていました。

しばらくして、そばで見ていた先輩が自然な流れで会話に入ってきて、うまく場を収めてくれました。

後から教えてもらいました。その患者さんは双極性障害の躁状態でした。

主治医への批判を聞いていたとき、「そんなはずはないのだけど」と思う場面もありました。でも反論しなかったのは、結果的に正解でした。反論することで議論になり、それが刺激となって興奮を引き起こしかねない。また、言い合いになることで「この人は敵だ」という気持ちを生んでしまうこともある。だから、まずは受け止める。それでいい、と教えてもらいました。

「なるほど」と思いました。

介護で培った「傾聴する」姿勢は活きていた。でも「なぜ傾聴するのか」の理由が、精神科では全く違いました。奥が深いと思いました。

まとめ

精神科の日勤は、急性期と比べて「静か」です。モニター音もなく、救急車におびえることもなく、分刻みで走り回ることもありません。

でも、何もしていないわけではありません。待ちながら観察し、話しながらアセスメントし、コミュニケーションそのものを看護として提供しています。

精神科に怖いイメージを持っている方もいるかもしれません。私もそうでした。でも実際に働いてみると、介護や急性期で培った経験は確実に活きます。ただし、新しい「型」を覚える必要もあります。


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