精神科看護師になって後悔したこと・よかったこと|急性期から転職した現役ナースの本音


急性期病院から精神科病院へ転職して、数年が経つ。

転職前に想像していた精神科と、実際の精神科は、かなり違った。後悔したこともある。でも転職してよかったとも思っている。

どちらが正直な気持ちかと聞かれたら、両方だ。

この記事では、急性期から精神科へ転職した現役看護師として、後悔したことと、よかったことを、そのまま書く。

精神科に転職して後悔したこと

看護技術を使う機会が激減した

転職前から「精神科は医療行為が少ない」とは聞いていた。でも実際に経験してみると、その少なさは想像をはるかに超えていた。

急性期では毎日当たり前にやっていた点滴管理、ルート確保、吸引、術後観察。それらがほとんどない。

もちろん、まったくゼロではない。炭酸リチウムなど血中濃度の管理が必要な薬を服用している患者さんの採血は定期的にある。入院時の採血もある。うつ症状が重く自力で食事が取れない患者さんには点滴をすることもある。急性期ほどではないが、看護技術を使う場面はたしかに存在する。

それでも急性期と比べると、圧倒的に少ない。

転職して最初のころ、「自分は看護師として大丈夫なのだろうか」と本気で思った。技術を使わなければ、当然ながら技術は落ちていく。それが怖かった。

※看護技術の変化については、こちらの記事で詳しく書いている。 → 急性期から精神科に転職したら、看護技術はどうなったか

「待つ」という仕事に戸惑った

急性期では、分刻みで動いていた。処置が終わればすぐ次の患者さん、記録が終わればすぐ次の対応。常に何かをしていた。

精神科では、それが違った。

患者さんの歯磨きを待つ。食事が終わるのを待つ。会話の間を待つ。「待つ」ことが仕事の大きな部分を占めていた。

今でも心に残っている光景がある。

入職して初めて入浴介助に入った日のことだ。その患者さんは暴力行為のある男性で、男性看護師が3人ついていた。私が見るかぎり、その患者さんはそのとき落ち着いていた。男性看護師3人は、脱衣所で何をするでもなく、ただ静かに立っていた。

急性期では絶対にない光景だった。誰も動いていない。何も起きていない。ただ、そこにいる。

最初は「これでいいのか」と思った。でも今はわかる。その「ただそこにいる」こと自体が、精神科看護の技術のひとつだと。

5キロ太った

これは完全に想定外だった。

急性期では社員食堂がなかった。昼休憩は名ばかりで、実際には午前中に終わらなかった記録や業務をこなしていた。食事といえば、男子更衣室で一人、ラップに包まれたおにぎりを1個、5分もかけずに食べるだけだった。それでまた詰所に戻る。

精神科には社員食堂がある。1時間の昼休憩がきちんと取れる。しっかりご飯が食べられる。

その結果、5キロ太った。

運動不足にもなった。ある意味、後悔している。笑

精神科に転職してよかったこと

5時33分、空が青かった

今でも覚えている。

転職して最初のころ、就業時間は17時30分だった。前の急性期病院では、17時30分はやっと自分の記録の時間が始まるころだった。そこから2時間残業は当たり前だった。

精神科では違った。

17時25分ごろになると、スタッフが手を洗い始め、帰る準備をしていた。最初に見たとき、頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになった。「これでいいのか」と。

17時33分に病院の建物を出た。

空が、青く輝いていた。

こんな時間に外に出られる。明るい空の下にいる。子どもの顔が浮かんだ。転職してよかった、と思った瞬間だった。

回復して退院していく患者さんを見送れる

精神科には、笑顔で退院していく患者さんがいる。

入院時と見違えるように穏やかになって、「先生、看護師さん、ありがとうございました」と言って帰っていく患者さんを見るとき、ここで働いていてよかったと思う。

ただし、現実はそれだけではない。服薬調整がうまくいかずに入院が長引く患者さんもいる。思うような状態で退院できない患者さんもいる。なかには、亡くなる方もいる。

それでも、急性期と比べると、回復して退院していく患者さんの割合は多い。その一人ひとりを見送るたびに、精神科看護のやりがいを感じる。

以前の自分への後悔

急性期に勤めていたころ、精神科に通院している患者さんが入院してくることがあった。

その患者さんが、大量の飲んでいない薬を持っていた。服薬管理が全然できていなかった。そのとき、正直腹が立った。「精神科はちゃんと退院指導をしているのか」と思った。

今、精神科で働いて、わかった。

退院すると薬を飲まなくなってしまう患者さんは多い。自分が病気だと思っていない人もいる。精神的な理由から自己管理が難しい人もいる。服薬を続けることが、どれほど難しいことか。

今だったら、あの患者さんに対して、もっと違うかかわり方ができたと思う。

以前の自分の無理解を、後悔している。

急性期からの転職を迷っているナースへ

急性期と精神科は、タイプがまるで違う。

急性期は濁流だ。勢いよく押し寄せてくる流れに翻弄されながら、それでも前に進んでいく。忙しいが、充実している。

精神科は沼だ。ぬかるみにはまってなかなか抜け出せない。思う方向に進めない。とにかく時間がかかる。社会的に困難な事例も多く、支援者の思い通りにならないことも多い。社会制度に対して理不尽を感じることもある。

でも、精神科のやりがいは、その沼の中にある。

私たちが「困った患者さんだ」と思っているとき、その患者さん本人はそれ以上に困っている。その人が少しでも安定した生活に戻れるよう、チームで考え、関わり続ける。それが精神科看護だと、今は思っている。

急性期での経験は、必ず生きる。ぜひ、飛び込んでみてほしい。

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