急性期から精神科に転職したら、看護技術はどうなったか【経験者が正直に答える】
「精神科に転職したら、看護技術が落ちるって本当?」
精神科への転職を考えたとき、多くの看護師がこの疑問を抱くと思います。私もそうでした。
急性期病院から精神科病院に転職して、約3年が経ちました。結論から言うと、落ちます。正直に言います。
でも、それだけではありません。この記事では、数字と本音で「転職後の技術面のリアル」をお伝えします。
急性期時代、どのくらい技術を使っていたか
まず、比較の基準として、急性期時代の話をします。
採血は毎朝の日課でした。朝食前の早朝、多いときは一人で何人もこなします。血管が細い人、浮かない人——指の腹で触れながら「ここだ」という感覚を頼りに穿刺する。その繰り返しでした。日勤帯も医師のオーダーや入院時の採血があり、週に10〜20件は当たり前にこなしていました。
採血以外も、日常的に使う技術が多くありました。
- ルート確保・点滴管理
- シリンジポンプ・輸液ポンプの操作
- CV挿入の補助
- 気管挿管の補助
- 急変対応・心臓マッサージ
- 看取りのケア
これらが、日常の中に当たり前にありました。
精神科に転職して、実際に落ちたもの
精神科に来て約3年。技術面で正直に感じていることをお伝えします。
採血
定期採血はあります。ただし頻度は急性期の半分以下。週に平均5件前後、少ない週はもっと少ないです。
そして気づいたことがあります。駆血帯で縛って血管を怒張させ、指の腹で触れる。あのとき「ここだ」と感じていたセンサーの感度が、明らかに鈍っています。
穿刺しても逆血がない——そんな場面が増えました。急性期では「苦手」と思っていなかったのに、です。精神科には気難しい患者さんや精神状態が不安定な患者さんもいます。そういった方への穿刺失敗は、通常以上に緊張を伴います。
ルート確保
急性期では高齢者の細い血管もある程度こなせていました。今は自信が持てないことがあります。精神科には太り気味の患者さんも多く、血管が見えにくいケースが増えていることも影響しています。
その他、出番がなくなったもの
胃管挿入は、当院では医師が行うルールのため転職後一度もしていません。手順は正直、怪しくなっています。導尿やバルン留置は清潔操作に自信が持てなくなってきました。シリンジポンプ・輸液ポンプの操作も、機械に触れない日々が続いています。
気管挿管の補助は、精神科の3年間で一度もありません。急変対応や心臓マッサージ、看取りのケアも、急性期時代と比べると激減しています。
使わなければ、錆びる。これは正直なところです。
精神科で逆に鍛えられたもの
技術が落ちた話ばかりでは正確ではありません。精神科に来て、確実に得たものがあります。
精神科の薬に詳しくなった
抗精神病薬、気分安定薬、睡眠薬——急性期では名前しか知らなかった薬の特性や副作用を、日常のケアの中で自然と学べます。
精神的な観察力がついた
統合失調症、うつ病、双極性障害、解離性障害——さまざまな疾患のケースを重ねることで、「この患者さんはこういう経過をたどるだろう」と見通せるようになりました。
急性期にいたとき、「変わった患者さんだな」と感じていた方が、今思えば精神疾患だったのかもしれない——そう気づく場面が増えました。身体の異常だけでなく、精神的な背景から症状を読み解く目が育ったと感じています。
キャリア全体で見たら、損か得か
技術が落ちることは事実です。それは認めます。
ただ、私はこう思っています。体で覚えたことは、そう簡単には消えません。
また技術が必要な職場に移ったとき、ゼロから覚えるのとはわけが違います。感覚は必ず戻ってきます。
それに、看護師として大切なのは技術だけではないはずです。
身体あっての精神、精神あっての身体。人は心と体が切り離せないものです。身体を診ながら精神も見られる、精神を診ながら身体も見られる——そういう看護師のほうが、私はカッコいいと思っています。
精神科への転職を「もったいない」と言う人もいます。でも私は後悔していません。心を扱う分野は奥深く、面白い。キャリアとしてもプラスになると感じています。
ひとつだけ正直に言うとすれば、「看護技術を磨いてナンボ」という価値観の強い方には、精神科は合わないかもしれません。処置よりも対話と観察が中心の職場です。その価値観が合うかどうか、転職前に自分に問いかけてみてください。
技術は落ちます。でも、それ以上のものを得られる場所でもあります。