精神科病院の種類と選び方【転職前に知っておくべきこと】
「精神科に転職したいけど、どんな病院を選べばいいかわからない」
そう感じている方は多いのではないでしょうか。
精神科病院といっても、その中身は病院によってまったく異なります。病棟の種類によって、仕事の内容も雰囲気も、求められるスキルも違います。同じ「精神科看護師」でも、どの病棟に配属されるかで、働き方は大きく変わるのです。
私は急性期病院から精神科病院に転職し、現在は急性期病棟で3年目を迎えています。転職前に知っておきたかった「病棟の種類と選び方」について、現場目線でお伝えします。
転職のプロセス(求人の探し方・面接・給与の比較方法)については、別の記事で詳しく書いています。この記事では「どんな病棟があるか」「自分に向いているのはどこか」に絞って解説します。
精神科病院の病棟には「種類」がある
精神科病院の病棟は、診療報酬上の分類でおおむね以下のように分かれています。病院によって呼び方は異なりますが、機能としては共通しています。
- 精神科急性期治療病棟
- 精神科一般病棟(慢性期寄り)
- 精神療養病棟
- 認知症治療病棟
私の勤務先では「急性期病棟・治療病棟・回復期病棟・療養病棟」という名称を使っていますが、全国的な分類とほぼ一致しています。
同じ「精神科病院」でも、急性期病棟と療養病棟では、仕事の内容がまるで違います。求人票の「精神科病院」という表記だけを見て応募すると、入ってから「思っていたのと違う」となりかねません。どの病棟があるか、自分はどこに配属されるかを、事前に確認することが大切です。
各病棟の特徴【現場目線で解説】
精神科急性期治療病棟
精神症状が悪化した患者さんが入院してくる病棟です。統合失調症・うつ病・躁うつ病・認知症のBPSDなど、症状が激しい状態の方が多く、入院直後は対応が難しいケースもあります。
入院期間はおおむね3ヶ月を目安としており、症状が安定したら転棟・退院・転院へとつないでいきます。
仕事の特徴
- 入院対応があり、4つの病棟の中で最も忙しい
- 暴力リスクが最も高い
- 保護室(鍵のかかる個室)があり、急性期こそその必要性が高い。入院直後の激しい症状に対応するため、むしろ急性期病棟が保護室を最も活用する場面が多い
- 一方で、3ヶ月という区切りがあるため「いつかは終わる」という気持ちで関われる
- 患者さんの状態変化が大きく、日々変化がある
精神科一般病棟(慢性期・治療病棟)
急性期の3ヶ月を超えても退院が難しい患者さんが移ってくる病棟です。退院に向けた長期的な調整が主な仕事になります。
保護室が設置されていることも多く、自傷・他害リスクが高い患者さんが長期間入院していることもあります。
仕事の特徴
- 長期目線でのケアと退院支援が中心
- 患者さんとじっくり関係を築ける
- 急性期ほどではないが、緊張感のある場面もある
精神療養病棟(回復期・長期療養)
何年も入院を続けている患者さんが多い病棟です。退院と再入院を繰り返し、長期入院となっている方が中心です。
介護士スタッフが多く、介護との協働が重要になります。
仕事の特徴
- 変化は少なく、ルーティンワークが多い
- 患者さんとなじみの関係を長く築ける
- 退院支援の機会は少ない
- 介護経験があると強みになる
療養病棟(身体合併・長期療養)
精神科病棟でありながら、ほぼ寝たきりの患者さんが多い病棟です。胃ろう・食事介助・おむつ交換など、一般科の療養病棟に近い業務が中心になります。
仕事の特徴
- 身体介護が中心
- ルーティンが多く、変化は少ない
- 看取りが定期的にある
- 男性介護スタッフが多い傾向がある
単科病院とケアミックス病院、どちらを選ぶか
精神科病院を選ぶとき、「精神科単科病院」か「総合病院・ケアミックス病院の精神科」かという視点も重要です。
単科病院のデメリット
精神科単科病院には内科医が在籍していることも多いですが、身体合併症への対応には限界があります。患者さんが転倒して骨折した場合や、肺炎になった場合は、他院への紹介・転院が必要になります。転院に伴うサマリー作成や退院準備の手間がかかり、何より患者さんへの負担が大きくなります。
一般科のスキルを維持・活用したい方には、物足りなさを感じる場面があるかもしれません。
ケアミックス・総合病院の精神科のメリット
内科や外科などと連携しやすく、身体合併症への対応がスムーズです。急性期病院で培った看護スキルを活かしやすい環境でもあります。
どちらが優れているということではなく、「自分が何を大切にするか」によって選択は変わります。
自分に向いている病棟タイプの選び方
急性期病棟が向いている人
- 変化を好み、刺激のある環境が合う人
- いろいろな患者さん・疾患に興味がある人
- 個性的なスタッフとも楽しくやれる人
治療病棟・慢性期病棟が向いている人
- 腰を据えて、長期目線でケアしたい人
- 患者さんとじっくりコミュニケーションを取ることが好きな人
- 退院支援にやりがいを感じる人
回復期・長期療養病棟が向いている人
- ルーティンに意味を見出せる人
- 介護スタッフとうまく協働できる人
- なじみの患者さんと長く関われることに喜びを感じる人
療養病棟が向いている人
- 身体介護が苦にならない人
- 穏やかなペースで働きたい人
- 看取りに向き合えるメンタルがある人
精神科で働く前に知っておきたいこと【倫理観の話】
最後に、どの病棟を選ぶにしても、精神科で働く上で欠かせないことをお伝えします。
精神科では、患者さんを保護室に入れたり、行動を制限したりする場面があります。これは精神保健福祉法に基づき、医師の指示のもとで行われるものです。
しかし、立ち止まって考えてみてください。鍵をかけて閉じ込めるという行為は、院外であれば犯罪です。監禁罪にあたります。
それを医療として行うということは、「他に手段がなく、本人や他者を守るために、やむを得ず行う」という高い倫理的根拠が必要です。「自分が偉いから」「管理しやすいから」という理由で行うものでは、決してありません。
精神科で働くということは、常に「これは本当に正しいのか?」と自分に問い続けることが求められます。人の自由を制限することへの緊張感と倫理観を、失わずにいられるか。それが、精神科看護師に問われる資質だと、私は思っています。
まとめ
- 精神科病院の病棟には種類があり、仕事内容・雰囲気・向いている人が違う
- 急性期は変化が多く忙しい。慢性期・療養は安定しているがルーティンが多い
- 単科病院とケアミックス病院では、身体合併症への対応力に差がある
- どの病棟を選ぶかは「自分が何を大切にするか」で決まる
- 精神科で働く上で、高い倫理観は欠かせない