老健で6年働いて気づいたこと【介護福祉士が本音で語る】
老人保健施設(老健)で、6年間働きました。
今の自分のベースは、あの6年間にあると感じています。看護師になった今も、介護福祉士として老健で積み上げてきた経験が、日々の仕事に活きています。
この記事では、老健での6年間を正直に振り返ります。これから老健で働こうと考えている方、介護の仕事に興味がある方に、少しでも参考になれば嬉しいです。
この法人を選んだ理由【祖母との記憶から】
老健を選んだというより、その法人を選んだのが正確なところです。
理由は、認知症ケアに特に力を入れた法人だったからです。
祖母が認知症になりました。当時の自分には、うまく関わる方法が分かりませんでした。その後悔が、「認知症の人のケアをちゃんと学びたい」という気持ちにつながり、この道を選ぶきっかけになりました。
また、その法人では海外研修として、福祉先進国への渡航機会がありました。外国の文化や福祉に興味があった自分にとって、それも大きな動機のひとつでした。
老健での失敗談【最初は認知症のことが分かっていなかった】
入職してすぐの頃、やってしまった失敗があります。
退社前に、利用者さんへ何気なく声をかけました。「これから帰ります。ありがとうございました。」
すると、その利用者さんが「私も帰る」と言い出し、落ち着かなくなってしまいました。
認知症の方に「帰ります」という言葉がどう響くか、当時の自分には分かっていませんでした。帰宅願望のある方にとって、「帰る」という言葉は強く反応してしまうことがあります。
この失敗から、認知症ケアは知識と経験の積み重ねだということを、身をもって学びました。
リーダーとして向き合った看取り【臨床倫理の難しさ】
リーダーになってから、看取りに向き合う経験をしました。
口から食べ物を摂ることが難しくなり、点滴の針も入らなくなった利用者さんがいました。家族と何度も話し合いを重ねた結果、胃ろうを増設することになりました。
でも今でも、「本当にそれでよかったのか」という思いが残っています。
正解があるわけではありません。でも、その問いと向き合い続けることが、介護の仕事の本質なのかもしれない。認知症の臨床倫理の難しさは、今も心に残っています。
老健で学んだこと【身銭を切って学びに行った】
老健での6年間で、多くのことを学びました。
認知症ケアの技術
認知症の方が落ち着ける環境を整えることの大切さを学びました。本人が使っていた家具や持ち物を持ち込む。衝立などでパーソナルスペースをつくる。役割を持ってもらうことで、落ち着きを取り戻すことがある。
テクニックとしてのコミュニケーションも大事ですが、環境整備がケアの土台になるということを、ユニットケアを通じて学びました。
身銭を切って学びに行った
介護技術をもっと高めたいと思い、県外まで自分でお金を払って研修に行ったこともありました。現場で学ぶだけでなく、外に出て学ぶことの大切さを、この時期に知りました。
スウェーデンへの海外研修
法人の海外研修で、スウェーデンに行く機会を得ました。
印象的だったのは、環境整備への徹底したこだわりと、移乗にリフトを使うことでした。難しい技術は必要ありません。腰への負担も大幅に減ります。
日本でもリフトの導入は少しずつ進んでいますが、まだまだ普及しているとは言えません。現在の職場でも、リフトがあれば床からの離床がずっと楽になるのに、と思う場面が多くあります。
大変だったこと【リーダーの苦労】
楽しいことばかりではありませんでした。
リーダーになってからのチーム運営は、思うようにいかないことの連続でした。自分の考えをメンバーに伝えることの難しさ、看護師サイドとの意見の相違、医師とのコミュニケーションの壁(医療知識がないと、どうしても蚊帳の外に感じることがありました)。
シフトを組む立場になると、自分が割を食う場面も多かったです。家族対応や新人教育も、リーダーの大切な仕事でした。
今の自分だったら、もっとうまくやれたのに、と思うことがあります。でも、それも成長の証だと思っています。あの苦労があったから、今がある。
老健が今の自分のベースになっている
6年間を振り返ると、あの経験が今の自分の土台になっていると感じます。
老健は「病院と在宅をつなぐ場」です。介護はもちろん、看護とはどういうものかを目の当たりにできる場所でもありました。もし老健で働いていなかったら、看護師を目指していなかったかもしれません。
今の私は、介護福祉士と看護師のダブル資格を持っています。でも、今の自分の働くスタンスの根源にあるのは、介護の考え方だと感じています。状況によっては、介護と看護のハイブリッド的な視点で動いていることもあります。
それが、老健で培われたものだと思っています。
これから老健で働こうとしている人へ
一口に老健と言っても、いろんな職場があります。入ってみると、思っていたのと違うと感じることもあるかもしれません。
それでも、老健は多職種連携を学べる貴重な場所です。医師・看護師・介護士・リハビリ職・栄養士・相談員。これだけ多くの職種が関わる職場は、そう多くありません。
リハビリ職がいるのも、老健ならではの特徴です。
介護という仕事を、私はこう考えています。
看護が絵画や写真のような個々の芸術だとすると、リハビリは音楽。そして介護は、映画のような総合芸術ではないか、と。
医療・福祉・リハビリ・生活支援・コミュニケーション。様々な要素が絡み合って、一人の人の生活を支える。
そういう意味において、老健は特におすすめできる職場です。