介護福祉士と看護師、どちらが自分に合っている?両方やった私が本音で答える
「介護福祉士として働いているけど、看護師も気になっている」 「看護師を目指したいけど、本当に自分に向いているのか不安」 「介護と看護、結局どちらがいいんだろう」
そんなふうに迷っている人は、少なくないと思います。
私はもともと介護福祉士として老健で6年間働き、その後、准看護師・正看護師の資格を取得して、今は精神科病院で看護師として勤務しています。
介護も看護も、どちらも現場で経験してきた立場から、できるだけ本音でお伝えします。
「どちらが正解か」ではなく、「自分で選ぶための軸」を持って帰ってもらえれば、と思います。
介護福祉士と看護師、仕事の「中心にあるもの」が違う
まず、大前提として伝えたいことがあります。
介護福祉士と看護師は、同じ「人を支える仕事」でも、仕事の中心にあるものが根本的に違います。
介護福祉士の中心にあるもの:その人の生活・人生・願い
介護の仕事をしていたころ、私の頭の中にあったのはいつも「この人は何を望んでいるか」でした。
今日の調子はどうか。何が食べたいか。誰に会いたいか。どんな人生を歩んできた人なのか。どうすれば、その人らしい毎日を過ごしてもらえるか。
老健で働いていた時に入所していた、高齢の男性患者さんのエピソードが、今でも記憶に残っています。
認知症があり、「帰りたい」とよく口にされていた方でした。ご家族も帰してあげたい気持ちはあるけれど、身体状況を考えると難しい、と感じていました。
でも、スタッフみんなで考えて、ご家族と協力しながら、その方が長年過ごした場所に戻れるよう段取りをしました。
到着したとき、その方の表情が変わりました。
「帰れるとは思ってなかった」と家族が涙を流していたのを、今でも覚えています。
身体状況が改善したわけでも、病気が治ったわけでもない。でも、その人の願いが叶った。
これが介護の仕事の本質だと、私は思っています。
看護師の中心にあるもの:まず、状態を回復させる
看護師になってから、意識が変わりました。
「まず、この人の状態を安定させなければならない」
点滴・注射・バイタルサイン・アセスメント。一般科にいたころは、生命の危機を脱することが最優先でした。もちろん、その後の生活を考えることも大切ですが、まず医療的な安定があってこそ、です。
どちらが上、ということではありません。役割が違う、ということです。
それぞれの「強み」と現場の引き出し
介護福祉士の強み:技術と、生活を見る目
介護福祉士の強みは、身体介護の技術と、生活全体を見る視点です。
移乗・おむつ交換・入浴介助など、身体介護の技術は介護福祉士のほうが圧倒的に洗練されています。
例えば、ベッド上で体を動かしたいとき、スライディングボードなどの介護用具がない場面では、大きめのポリ袋を体の下に敷くと摩擦が減ってスムーズに動かせる、といった現場の知恵があります。こういった「引き出し」の多さは、介護ならではです。
また、「この人は何ができて、何が難しいか。どうすればできるようになるか」という自立支援の視点も、介護福祉士の大きな強みです。
看護師の強み:医療処置とアセスメント力
介護士として働いていたころ、正直うらやましかったのが看護師のアセスメント力でした。
便秘ひとつとっても、腸の動きや薬の影響、水分摂取量など、解剖生理学の知識をもとに原因を考えて対応する。「なぜそうなっているか」を根拠をもって説明できる。
看護師になってその力がついてきたとき、介護時代に憧れていたものを手にした感覚がありました。
しんどさの「種類」が違う
介護と看護、どちらがきついか。これはよく聞かれる問いですが、正直「種類が違う」というのが答えです。
介護福祉士のしんどさ
排泄介助・シーツ交換・入浴介助など、身体介護の最前線に立つのが介護福祉士です。いわゆる「4K(きつい・きたない・くさい・給料が安い)」と言われることがあります。表現として良くない部分もありますが、現実として否定しきれない面があるのも事実です。
専門職として対等だという建前はありますが、医療・介護の現場では、ヒエラルキーの構造が存在することも否めません。
看護師のしんどさ
看護師のしんどさは、命を預かる重圧です。
点滴・注射ひとつミスできない緊張感。技術の手順も知識も、常に根拠を問われます。患者さんは体調が悪い状態で来るため、言葉がきつくなることもあります。「下手くそ!他の看護師を呼んで来い!!」と言われたことは、一度や二度ではありません。
そして、実は看護師も「5K」という側面があります。きつい・きたない・くさい・給料が業務量に見合っていない、そして感染リスクがある。介護の4Kに、さらに一つ加わる形です。夜勤の重さは介護と変わらない部分もある。それでも給料が十分かというと、疑問を感じることがあります。
看護師になって「意外だった」こと
思ったより計算は難しくない
看護師になる前、「複雑な計算があるのでは」と不安でした。でも実際は、電卓を使える場面も多く、点滴の滴下速度を自動で出してくれるツールもあります。数学が苦手でも、それが致命的になることはほとんどありませんでした。
人間は、意外と何にでも慣れる
採血・点滴・体に針を刺したり直接触れる処置。最初は「本当に自分にできるのか」と思っていました。でも、人間は慣れる生き物です。介護の専門学校時代、「他人の排泄処理が生理的に無理」という理由で退学した同級生もいましたが、そのレベルでなければ、意外と何とかなります。
男性看護師は、頼りにされることが多い
看護師の世界は女性が多い職場です。そのぶん、男性看護師は患者さんから頼りにされることがあります。人間関係のこみいった場面に巻き込まれることも、比較的少ない印象です。
介護の経験が、看護師として生きている
これが一番の「意外」かもしれません。老健で培った身体介護の技術・生活を見る視点・利用者さんとの関わり方、それらすべてが看護師としての自分を支えています。遠回りではなかった、と今は思います。
結局、どちらが「自分に合っている」のか
正直に言います。これは、私には決められません。
ただ、選ぶための軸はお伝えできます。
介護福祉士が向いている人
- その人の生活・人生・願いを支えることに喜びを感じる
- じっくりと、長く関わることが好き
- 医療処置よりも、生活ケアや関係性を大切にしたい
看護師が向いている人
- 医療知識を深めて、根拠をもってケアしたい
- アセスメントや判断する力を身につけたい
- キャリアの幅を広げたい・収入を上げたい
どちらが上でも下でもありません。どちらも、人の人生に深く関わる仕事です。
介護から看護師を目指すことを考えているなら、「なぜ看護師になりたいのか」をまず自分に問いかけてみてください。その答えが、あなたの判断の軸になります。