転職エージェントを使って、結局転職しなかった話【介護福祉士20年の妻の場合】
妻は転職エージェントを使って転職活動をして、結局、今の職場に残りました。
介護の仕事を続けながら、転職しようかどうか迷っている方に読んでほしいと思っています。エージェントを使うべきか、自分で探すべきか。そこで止まっている方にも。
この記事では、実際にエージェントを使って分かったことを、そのまま書きます。何を代わりにやってもらえたのか。自分たちだけで動いたときと、何が違ったのか。そして、条件が揃っていたのに転職しなかったのは、なぜだったのか。
転職しなかった話ですが、失敗した話ではありません。使わなかったら、今も分からないままだったことがいくつもありました。
妻は介護福祉士として20年以上のキャリアがあります。グループホームの管理者を務め、ユニットリーダー研修も修了しています。2025年、その妻が転職エージェント「介護ワーカー」に登録しました。
私は看護師ですが、自分の転職ではエージェントを使ったことがありません。だから隣で見ていて、ふーん、と思っただけでした。ちょっと面白そうだな、とも感じました。本当にエージェントで転職活動ができるんだ、という程度の感想です。特に反対はしませんでした。使って楽になるなら、いいんじゃないかと。
転職活動の始まりは、驚くほど漠然としていた
妻がエージェントに登録したきっかけは、はっきりしたものではなく、あまり覚えてもいないそうです(笑)。サイトを漫然と見ていて、いいなと直感で思って、深く考えずに登録しただけです。その後、担当の人から連絡があって話をしてみたら、意外とよかったらしく、そのままお願いすることにしたそうです。
よくよく考えて登録したわけではありませんし、このエージェントが良さそうだと見極めていたわけでもないのです。「転職活動しないとな…。」とぼんやりスマホを眺めていて、なんとなくクリックした。その程度のノリだったようです。
転職を考えたきっかけは、災害のニュース
妻が転職を考えたきっかけについて話します。
今は私がフルタイムで働き、子どもがまだ小さいので、妻が仕事をセーブしてくれています。
今の職場は新卒から勤めていますが、何度かの引っ越しにともない、通勤時間が車で片道1時間近くになってしまっています。
でも妻は、長時間の運転はとくに気にならないそうです。ではなぜ転職を考えたか。
それは、ある災害のニュースでした。
災害が起きた時、子どもを迎えに行くのに時間がかかる。距離が長いと、その途中で道が通れなくなっている恐れがある。いざという時すぐに駆けつけてあげたい。そういう思いからだったと、後から知りました。
20年以上のキャリアがあって、管理者の経験もある。それでも欲しかったのは、役職でも給料でもなく、子どもの都合に合わせられる働き方でした。
エージェントには、その希望をはっきり伝えていました。こちらからも、いいと思った候補先をいくつか挙げていました。
エージェントが最初にやったのは、候補の絞り込み
すると、エージェントから返ってきたのは意外な内容でした。
こちらが挙げた候補のうち、いくつかは「子育て中の方には厳しいと思います」と教えてくれたのです。
これは自分たちだけでは分かりませんでした。求人票を見ても、そんなことは書いていません。書いてあるのは勤務時間と給与と休日数です。この施設は子育て中の人が続けにくい、とはどこにも書いていない。むしろ、「子育て支援充実」とまで書いてありました。
エージェントを使っていなかったら、望みの薄い候補にもやみくもに応募していたと思います。時間を使って、断られて、また次を探して。
求人を紹介してもらうためにエージェントを使うのだと思っていました。実際にいちばん助かったのは、応募しなくていい先を先に教えてもらえたことでした。
断られた。でも、理由は分かった
エージェント経由で打診した施設のひとつは、断られました。条件もよく、やりがいも期待できそう。でも、面接まで進むこともなく、その時点で終了となりました。
一度断られた時点で、普通であればあきらめていたと思います。でも、エージェントが間に入ってくれているので、結構気軽にもう一度聞いてもらうことができました。
結果は、やはりお断りでした。
ただ、理由が返ってきました。夜勤も含めて、すべてのシフトがこなせる人材が欲しかった、とのことでした。
どれだけキャリアがあっても、相手が求める人材でなければ就職は難しい。当たり前のことですが、言葉として返ってくると痛感させられました。
それでも、分かってよかったと思っています。理由が分からなければ、こちらの希望ばかりを追いかけて就職活動を続けるところでした。おかげで、この施設に関しては後悔はないそうです。
エージェントを通さず応募して、理由も分からず落ちた
同時期に、エージェントを通さずに応募した施設もありました。
このときは私も全面的にバックアップしています。履歴書を作り、職務経歴書も整えました。施設のホームページを読み込んで企業研究をして、AIを使って面接の想定問答集まで作りました。「我ながらよくできた」と、万全の態勢で臨んだつもりでした。
それでも結果は「お断り」でした。そしてその理由は、教えてもらえませんでした。ショックでした。何が足りなかったのかは最後まで分からず、モヤモヤが今でも残っています。
面接での印象から、おそらくここもフルタイムで夜勤までできる人を求めていたのだろう、と推測はできます。でもそれはただの推測であって、確かめることはできません。エージェントがいれば確認してくれたのではないかと思い、後悔している点です。
日程調整をすべて任せられる安心感
これは地味ですが、意外と大きなメリットでした。
働いていると、日中に応募先から電話がかかってきても、すぐに出ることができません。折り返そうとしても、今度は先方が対応できなかったりして、タイミングが合わないこともあります。忙しい中そのようなことに気を遣うのは、けっこうイライラしてしまいます。現在の仕事に支障が出てしまう可能性もあり、あまり良いことではありません。
エージェントを使っている間、そのやりとりは全部やってもらえました。見学の日程も、面接の調整も、間に入って決めてきてくれます。
ここをまるっとお任せできるだけで、負担がかなり違いました。
エージェントに任せた給与交渉
いちばん驚いたのは、給与のことでした。
ある施設から提示された時給は、妻が今もらっている額より低いものでした。
そこで妻は、エージェントに現在の時給を伝えて、最低でもそのくらいは欲しいと希望を出しました。
すると、OKが出ました。しかも希望した額が、そのまま通りました。
妻は半分驚いて、半分嬉しそうに言いました。
「お願いしてみるもんだね」
正直に言うと、悔しかったです。私は自分の転職のとき、給与明細を持参して交渉して、渋い顔をされました。それ以上は言えませんでした。面と向かって言われると、なかなかそれ以上は踏み込んでお願いしにくいものです。
私との違いは、間に人が入っていたことでした。エージェントには、今の時給を最初に伝えてあります。周辺の相場も分かってくれているし、こちらのキャリアも把握してくれている。だから、客観的な視点から、給与のことも交渉してくれるのだと思います。
お金のことは大切ですが、なかなか交渉しにくい部分でもあります。この点でも、エージェントがついているのは心強いと思います。
条件は揃った。それでも行かなかった
そうして、時給の希望が通った施設に見学へ行きました。
通勤時間も今より短くなる場所でした。条件だけを並べれば、悪いところはひとつもありません。
でも、見学して、いろいろ見ている時点で、妻は思ったそうです。
「いい施設だけど、やっぱり今のところが合っているかも…」と。
妻が勤めているのはユニットケアの老健です。見学したのは従来型の特養でした。
妻は今の職場で、その人に合わせたケアを届けたいと思ってやってきました。そこを手放すことが、時給や通勤時間と釣り合わなかったのだと思います。
もうひとつ大きかったのは、人間関係でした。
20年以上、同じところで働いています。同期が事務長や施設長、主任といった立場になっています。だから話が通りやすいし、子どもの都合で融通を利かせてもらうこともできる。
子育てのために転職しようとしていたのに、子育てのしやすさという点では今の職場のほうが上でした。
これは外を見なければ分からないことでした。そして求人票のどこにも書いていないことでした。
転職しなかった。でも、無駄ではなかった
妻は結局、転職せずに今の職場で働いています。
お断りしたときでも、エージェントは前向きでした。「また一緒に考えましょう」と言ってくれたそうです。一度断ったら関係が終わる、ということはありませんでした。そのあとも何度か連絡があったそうですが、今は転職活動を一休みしたい、と伝えると、妻の意思を尊重してくれたそうです。
結局は元の職場で同じように働いており、はためには何も変わっていないように見えます。
でも妻は、今の職場の良さを知り直しました。20年いる場所の価値は、中にいるだけでは測れません。比較する対象があって、初めて分かることがあります。
転職活動をしなければ、「ここしか知らないから」「もっといいところがあるはず」と、漠然とした不安や不満とともに働き続けていたでしょう。でも、今は違います。いろいろな施設を検討した結果、これまでと同じ職場で働いているのです。
変化はありませんが、いわば、「自分で選び取った現在」です。それはとても意味のあることだと思います。
転職活動をすることで、自分が本当に何を大事にしているかが見えてくることがあります。妻の場合、それは子供のことでした。結果としてエージェントに頼むメリットは多かったですが、自分たちで動いたからこそ見えたものもあります。この記事が、迷っているあなたの参考になればうれしいです。