介護士の夜勤と看護師の夜勤は何が違う?両方経験した現役看護師が答えます


介護士として夜勤をしていた頃、看護師の夜勤がどんなものか、想像もできませんでした。

看護師になって実際に夜勤に入ったとき、最初に感じたのは「これは全然違う仕事だ」という感覚でした。場所が病院か施設かという違いだけではありません。夜勤中にやること、求められること、緊張する場面、全てが違いました。

介護福祉士として老健で6年間勤務し、その後看護師になった私が、両方の夜勤のリアルをお伝えします。介護士として夜勤をしている方、これから看護師を目指している方に、少しでも参考になれば嬉しいです。

介護士の夜勤:どんな仕事をしているか

私が勤務していたのはユニットケアの老健でした。

夜勤は夜9時から朝7時までの10時間。介護士2人、もしくは介護士と看護師の2人体制で、認知症の利用者さん40人をみます。一般的な夜勤と比べると変則的なシフトでした。

夜勤の主な仕事はこうです。申し送りを聞き、夜間の注意事項を把握する。1時間ごとに見回りをして、利用者さんの状態を確認する。起きている方の対応、帰宅願望が出た方の話を聞く、眠れない方に付き添う。そして最も緊張するのが、転倒・転落の対応でした。

施設は利用者さんの「生活の場」です。夜間は静まり返っていて、生活音があるくらいです。その静けさの中で、夜勤は過ぎていきます。

介護士として一番緊張した瞬間:看護師への報告

夜勤で最も緊張したのは、転倒・転落を発見したときの看護師への報告でした。

ある夜、利用者さんが転倒しているのを発見しました。何が起きたのか分からず、気が動転してしまいました。利用者さんに声をかけることもできず、すぐに看護師を呼びに行きました。

来てくれた看護師は、私が勤務するユニットとは別のユニットの看護師でした。当然、その利用者さんの情報を持っていません。「いつ、どこで、どのようにしてこうなったのか」と聞いてきます。私には何も分かりません。しどろもどろになりながら答えることしかできませんでした。

その看護師の目が今でも忘れられません。「見ている利用者さんの情報くらい把握しておくべきだ」「看護師が来るまで何もせずに突っ立っているだけとはどういうことか」、そう言いたげな目でした。これは本当に辛かったです。

介護士として看護師に報告するとき、何をどう伝えればいいか分からない。そのもどかしさと情けなさは、介護士として夜勤をしている方なら共感していただけるのではないかと思います。

看護師の夜勤:根本的に何が違うか

看護師として病院の夜勤に初めて入ったとき、最初に感じたのは「空気が違う」ということでした。

施設の夜は静かです。しかし病院の夜は、常にモニターの音が鳴り響いています。シーンと静まり返った中に、キーボードをカタカタ打つ音とモニターの音だけが響く。何とも言えない緊張感がありました。

看護師の夜勤で求められることは、介護とは根本的に違います。施設は「生活の場」ですが、病院は「治療の場」です。入院している患者さんは、今まさに病気と闘っています。夜勤中に状態が急変することもあります。

モニターが付いている患者さんはその数値を常に観察する。モニターが付いていない患者さんでも、急変リスクがあると判断した方には重点的に見回りをする。ナースコールで「苦しい」と呼ばれたら、すぐに状態を観察して医師に報告する。夜勤中の看護師の仕事は、観察と医師への連携が中心です。

看護師として一番緊張した瞬間:医師への報告

看護師になって夜勤に入り、最も屈辱的な経験をしたのは医師への報告でした。

先輩と2人で夜勤をしていたある夜、私が担当するグループの患者さんが苦しみ始めました。心不全で入院している患者さんでした。呼吸状態が悪化していました。今なら心不全の増悪だとすぐに分かります。しかしその時の私には、何が起きているのか整理できていませんでした。

先輩と相談し、当直医に報告することになりました。先輩が「私が報告しようか」と声をかけてくれました。しかし私は「いえ、私がやります」と言いました。自分でやらなければと思っていたのです。

医師に電話しました。全くうまく話せませんでした。バイタルサインの数値を羅列するだけで、時系列はぐちゃぐちゃ。何を伝えたいのか自分でも分からなくなっていきました。しばらくして医師に言われました。「あ、もういいよ。ちょっと他の人に変わって」。

先輩はすらすらと状況を説明しました。医師はすぐに動いてくれました。私が感じたのは、無力感と顔から火が出るような恥ずかしさでした。あれは本当に屈辱でした。

その経験から学んだこと

あの屈辱をきっかけに、医師への報告を真剣に学びました。

一番頼りにしている先輩に、どう報告すればいいかを直接聞きました。先輩はこう言いました。「私はまず、先生にどうしてほしいかをズバッと言うようにしてる」。

つまり「先生、来てください」「先生、指示をください」と、まず相手にしてほしいことを伝える。そうすることで医師は何をすべきかをまず把握できる。その後に患者さんの背景・症状・アセスメントを伝える。相手が動きやすいように、相手の立場で考えながら報告することが大事だと学びました。

並行して、医師への報告について書かれた書籍もいくつか読みました。知識が広がり、それが自信にもつながりました。知識を実践して、ぴたりと当てはまったとき、本当に嬉しかったです。

介護経験は看護師の夜勤で役に立つか?正直な答え

結論から言います。夜勤に限れば、介護の経験はあまり役に立ちませんでした。

看護師の夜勤で求められるのは観察と医師との連携です。これは介護の現場では経験できないことです。急変した患者さんの状態をアセスメントして医師に報告する力は、看護師として働く中で一から身につけるしかありませんでした。

しかし、トータルで見れば介護経験は間違いなく財産でした。夜勤以外の場面では、介護経験が大きな武器になる場面がたくさんありました。

移乗などの身体介護技術は、体の使い方が身についているので患者さんへの負担が少ない。認知症・不穏対応は、施設で積み上げた経験が病棟でそのまま活きました。長く介護をしてきたことで、患者さんの些細な変化に気づく「人を見る力」も培われていました。そして治療だけでなく、その人の生活全体を見る視点も、介護経験があるからこそ持てるものだと感じています。

夜勤の観察と連携は看護師になってから鍛えるしかない。でも介護で培ったこれらの力は、看護師として働く上で確かな土台になります。

介護士として夜勤をしている方へ

最後に一つだけお伝えしたいことがあります。

介護士として夜勤をしている方で、将来看護師を目指している方がいれば、ぜひ今からバイタルサインの測定と基本的な観察を意識して身につけてほしいのです。

転倒・転落を発見したとき、すぐにバイタルサインを測り、意識レベルや出血の有無を観察できる介護士は、現場で非常に頼りにされます。それは介護士として一頭抜けるための力になります。そしてその経験は、看護師になってからも必ず活きてきます。

まとめ

介護士の夜勤と看護師の夜勤は、同じ「夜勤」という言葉でも、求められることが根本的に違います。

施設は生活の場、病院は治療の場。この違いがそのまま、夜勤の内容の違いになっています。

介護経験は夜勤の場面では直接は活きにくい。しかし介護で培った人を見る力・生活を整える視点・認知症対応の経験は、看護師として働く上で確かな財産になります。

遠回りに見えても、介護の経験は無駄ではありませんでした。そのことを、自信を持って言えます。


本記事の内容はあくまで私個人の経験に基づくものです。職場や病棟の種類によって夜勤の内容は異なります。