介護士から看護師になるための学費と給付金【113万円が実質ゼロになった話】


お金がないから看護師になれない、と思っていた時期がありました。

私は介護福祉士として老人保健施設で働いた後、准看護師学校に2年間通い、その後さらに正看護師学校の2年課程を卒業しました。介護士から看護師になるまでに、合計4年以上の学校生活がありました。

准看護師学校時代は、退職後の貯蓄と妻の支援、そして夜勤アルバイトで生活費を工面しながらなんとか乗り切りました。決して楽ではありませんでした。

正看護師学校では状況が変わりました。国の給付金制度と、学校・市・病院の奨学金を組み合わせた結果、条件を全て満たした場合の実質的な自己負担はほぼゼロになりました。アルバイトをせずに学業に集中することができました。

この記事で紹介する給付金・奨学金の話は、主に正看護師学校時代のことです。准看護師学校時代とは状況が異なります。混乱を避けるため、その都度どちらの話かを明記するよう心がけます。

使ったのは特別な方法ではありません。ただ、制度を知っていたかどうかの差です。

私の体験は2020年頃のものなので古い部分もあります。制度については現行の情報にアップデートしながら紹介します。最新情報は必ずハローワークや各機関に直接確認してください。


正看護師になるためのルートは複数あります

まず、看護師になるためのルートを整理しておきます。社会人や介護士出身の方が対象になりやすいものを中心に紹介します。

看護大学(4年制)

保健師・助産師の受験資格も得られます。大卒として入職できるため、初任給や昇給に有利なことが多いです。費用は高めですが、国公立なら私立より大幅に抑えられます。

看護短期大学(3年制)

専門学校と同程度の学費で学べます。ただし全国的に減少傾向にあり、選択肢は限られます。

看護専門学校・3年課程

高卒以上が対象。最もスタンダードなルートで、全国各地にあります。公立と私立で学費に大きな差があります。

5年一貫教育高校

中学卒業後から目指せます。高校在学中から看護を学び、5年間で正看護師の受験資格を得ます。准看護師を経ないため、ルートとしては最も早いです。

准看護師→正看護師(全日制2年課程)

准看護師の資格取得後、2年間の全日制正看護師課程に進むルートです。私が選んだのはこのルートです。社会人経験者や介護士出身者に多く、同じ境遇の仲間が集まりやすいのが特徴です。クラスの雰囲気は独特のあたたかさがあり、そのときの仲間は今でも財産だと思っています。

ただし、全日制であるため在学中は仕事との両立が難しい場合があります。

入学に必要な実務経験:

  • 高校卒業以上:実務経験不要
  • 中学卒業の場合:准看護師として3年以上の実務経験が必要

准看護師→正看護師(定時制3年課程)

准看護師取得後、定時制の正看護師専門学校に進むルートです。授業は主に夜間や土日に行われ、週3〜5日の通学が必要です。学校以外の時間は准看護師として働くことができるため、収入を確保しながら正看護師を目指せます。家庭や生活事情がある社会人に向いています。ただし全日制より1年多くかかります。

入学に必要な実務経験:

  • 高校卒業以上:実務経験不要
  • 中学卒業の場合:准看護師として3年以上の実務経験が必要

准看護師→正看護師(通信制2年課程)

働きながら正看護師を目指せる唯一のルートです。通信教材を使った自宅学習が中心ですが、スクーリング(登校)や病院実習のために年間数十日の通学が必要です。学校によって日数や時期が異なるため、事前に確認が必要です。

入学に必要な実務経験:

  • 2026年3月まで:准看護師として7年以上(84ヶ月以上)の実務経験が必要
  • 2026年4月以降:5年以上(60ヶ月以上)に短縮予定(学歴不問)

実務経験は就業場所を問いません。病院だけでなく、介護施設・訪問看護ステーション・保育所なども対象です。非常勤・パートの場合は常勤換算で計算されます。詳細は志望校に確認してください。

このルートは仕事を辞めずに進学できるメリットがある一方、自己管理が必要でモチベーションの維持が課題になることもあります。40代以上の入学者が最も多く、年齢を理由に諦める必要はありません。

この要件緩和は、迷っていた人にとって大きなチャンスです。私の准看護師学校時代の同期で、今年からこの通信課程に進んだ人がいます。「2年間損した気分」と笑いながら言っていました。それくらい、今回の短縮は大きな変化です。もし実務経験5年以上で通信制が気になっていたなら、今がトライする絶好の機会だと思います。


社会人・介護士出身者へのアドバイス

経済的に余裕があれば、最初から3年課程や大学を目指した方が看護師デビューが早いです。

ただし、准看護師→2年課程ルートにも良さがあります。同じ境遇の仲間が多く、互いに励まし合いながら学べます。「もう一度同じ選択肢を与えられても、2年課程を選ぶかもしれない」と今でも思います。資格取得という結果だけでなく、そのプロセスの中で得られるものも大きいです。どんな道を通ってきても、学びはたくさんあります。


准看護師学校時代のお金の話【正看護師学校とは別の話です】

まず准看護師学校時代のことを正直に書きます。

当時は老健を退職し、失業給付を受けながら受験準備をしました。失業給付が切れたタイミングで入学し、その後は貯蓄・妻の支援・グループホームでの夜勤アルバイトという三本柱でなんとか生活を維持しました。

この時期に専門実践教育訓練給付金や奨学金は使っていません。制度の存在を十分に知らなかったこともありますが、後から振り返ると、もっと早く情報収集しておけばよかったと思う部分もあります。

今ならAIで事前リサーチもできます。これから准看護師学校を目指す方は、入学前からハローワークや学校に相談することを強くおすすめします。


正看護師学校時代の学費【公費運営の2年課程を選んだ】

ここからが、給付金・奨学金を活用した正看護師学校時代の話です。

看護学校の学費は、公立か私立か、専門学校か大学かによって大きく異なります。

学費の相場比較:

課程目安
私立看護専門学校(3年)300〜350万円
公立・公費運営看護専門学校(3年)100万円台〜
公費運営看護専門学校(2年課程)私の実績約113万円
国公立看護大学(4年)約240万円
私立看護大学(4年)500〜700万円

公立・公費運営の学校は私立と比べて大幅に安いです。ただし倍率が高いことも多く、早めの情報収集をおすすめします。

私の実際の内訳(正看護師学校・2020年頃):

うろ覚えの記憶と手元に残っている記録をもとにしているため、不完全な部分もあります。あくまで参考としてご覧ください。

項目金額
入学金200,000円
受験料20,000円
クラス費(教材・宿泊研修・模試)70,000円
教科書代114,060円
1年次授業料等353,500円
2年次授業料等346,000円
2年次クラス費30,000円
合計約113万円

専門実践教育訓練給付金とは?【正看護師学校で活用した制度】

社会人経験のある方が看護学校に通う際、ぜひ活用してほしい制度があります。「専門実践教育訓練給付金」です。私が活用したのは正看護師学校在学中です。

雇用保険に一定期間加入していた方が、厚生労働大臣の指定を受けた講座を受講・修了した場合に、学費の一部が支給される国の制度です。看護師専門学校の多くが対象講座になっていますが、必ず志望校が対象講座かどうかを事前に確認してください。

給付の仕組み(現行制度):

タイミング給付率年間上限
在学中(6ヶ月ごと)50%40万円
卒業・資格取得・就職後+20%(計70%)56万円
就職後に賃金が5%以上上昇した場合※+10%(計最大80%)64万円

※2024年10月以降受講開始の方のみ対象

私が使った2020年頃は最大70%でしたが、2024年10月以降に受講を開始したあなたは、就職後に賃金が上がった場合、最大80%まで給付される制度になっています。以前よりも手厚い支援を受けられる時代になりました。

私の場合は約55万円が戻ってきましたが、これは私の学校の学費をもとにした概算です。給付対象となる経費は学費の全額ではなく、受験料や一部費用は対象外になる場合があります。実際の給付額は必ずハローワークで確認してください。

手続きの流れ(現行):

⚠️ 介護士・准看護師を退職してから入学する方へ: 離職日の翌日から原則1年以内に受講を開始する必要があります。退職前から早めにハローワークに相談することを強くおすすめします。

  1. ハローワークで支給要件を確認する まず自分が対象かどうかを確認します。雇用保険の加入期間が原則3年以上(初回は2年以上)必要です。

  2. 訓練前キャリアコンサルティングを受ける ハローワークのキャリアコンサルタントと面談し、「ジョブカード」を作成します。「なぜ看護師を目指すのか」「今後のキャリアをどう考えているか」を整理する場です。私が「最初だけ少し大変だった」と感じたのはここです。ただし担当者が一緒に考えてくれるので、それほど身構えなくて大丈夫です。

  3. 受講開始2週間前までに書類を提出する ハローワークへの直接提出のほか、電子申請・郵送・代理人による申請も可能です。

  4. 在学中は6ヶ月ごとにハローワークで申請する 定期的にハローワークに通う必要があります。同じ学校の同級生と窓口で会うこともありました。現在は電子申請が可能な手続きもあり、以前より便利になっています。

  5. 卒業・就職後に追加給付を申請する 雇用された日の翌日から1ヶ月以内に申請が必要です。期限を過ぎると受け取れなくなるため注意してください。

  6. (2024年10月以降受講の方)賃金上昇が確認できれば+10%を申請する

経験者として言えること: 手続きは少し複雑に見えますが、ハローワークの職員さんが丁寧に教えてくれます。言われた通りに進めれば大丈夫です。情報収集にはAIも活用できる時代になりました。ただし最終的には自分の足で動いて一次情報を得ることが大切です。制度は定期的に変わります。ハローワークや学校に直接確認するのが一番確実です。


【ひとり親の方へ】さらに手厚い支援制度があります

私のクラスには、子どもを育てながら看護師を目指しているシングルマザーの方が複数いました。准看護師学校・正看護師学校を通じて、それぞれが様々な制度を活用しながら学んでいました。

ひとり親家庭の方には、上記の給付金に加えて、さらに手厚い支援制度があります。

① 高等職業訓練促進給付金(こども家庭庁)

看護師・准看護師などの資格取得のため、6ヶ月以上養成機関で修業する場合に、在学中の生活費として毎月給付金が支給されます。

世帯支給額
市町村民税非課税世帯月額10万円
市町村民税課税世帯月額7万500円

支給期間は在学の全期間(上限4年)です。准看護師学校から正看護師学校へ続けて通う場合も、合計で上限4年として活用できます。修了時には修了支援給付金も別途支給されます。

② 自立支援教育訓練給付金(こども家庭庁)

対象講座の受講料の60%(最大160万円)が支給される制度です。①の高等職業訓練促進給付金と併用できる場合もあります。

どちらも窓口はお住まいの市区町村です。受講開始前に必ず相談・申請が必要なため、入学前に早めに問い合わせてください。

子どもを抱えながら看護師を目指すのは、想像以上に大変なことです。それでも制度を知って、一歩踏み出した方たちがいます。あなたも、まず窓口に相談してみてください。


奨学金を上手に組み合わせる【正看護師学校時代の三本柱戦略】

給付金だけでなく、奨学金も組み合わせることで、さらに負担を減らせます。私が活用したのは正看護師学校在学中の「市の奨学金」と「病院の奨学金」の2本です。

奨学金は給付金とは異なり、条件付きで返済が免除される制度です。条件を満たせない場合は返済義務が生じます。内容をしっかり理解した上で申し込んでください。

市(自治体)の奨学金:

入学後に学校から案内がありました。成績条件がある場合でも、クラスの人数によっては思った以上にチャンスがあります。成績に自信がなくても、まず学校に確認して申請してみることをおすすめします。ただし条件は学校によって異なるため、必ず確認してください。

注意点として、市の奨学金には居住要件がある場合が多いです。「市内で一定期間勤務し、市内に居住すること」という条件が設けられていることがあります。結婚・転勤・家族の事情などで市外に引っ越す場合は返済義務が生じる可能性があります。長期的なライフプランも含めて検討してください。

病院の奨学金:

病院の奨学金は、入学前に申し込む必要があります。入学後の申し込みでは、さかのぼって支給されないケースがほとんどです。志望校が決まった段階で、就職を希望する病院に直接問い合わせることをおすすめします。私の場合は、准看護師の資格取得後・正看護師学校への入学が決まったタイミングで面接に行きました。

お礼奉公について【重要】:

奨学金には「お礼奉公」(一定期間、指定された場所で働くことで返済が免除される条件)があります。お礼奉公の期間中に退職した場合、残りの期間分の奨学金を一括返済しなければならないケースがほとんどです。転職や異動の自由が制限されることを十分に理解した上で申し込んでください。

ただし、ひとつだけ伝えておきたいことがあります。どうしても職場が自分に合わず、心身に限界を感じるときは、お金を返して辞めるという選択肢もあります。奨学金の返済は、時間をかけて対応できることがほとんどです。精神的に追い詰められるまで頑張り続ける必要はありません。あなたの健康と人生の方が、はるかに大切です。

情報収集のコツ:

私の場合、准看護師学校の先生が「奨学金もいろいろあるよ」と教えてくれたのがきっかけでした。そこから自分でリサーチし、市と病院の奨学金の両方を申請しました。学校の先生に「奨学金はありますか?」と一言聞いてみるだけで、情報が広がることがあります。今ならAIでリサーチすることもできますが、最終的には自分の足で動いて一次情報を得ることが大切です。


私の実際の収支まとめ(正看護師学校時代)

制度をフル活用し、条件を全て満たした場合の収支はこうなりました。

給付金(国から支給されたお金):

項目金額
学費総額約113万円
専門実践教育訓練給付金(戻ってきた金額)約55万円
給付後の実質学費約58万円

奨学金(条件を満たした場合に返済免除になるお金):

種類金額返済免除の条件
市の奨学金約96万円市内での一定期間の勤務・居住
病院の奨学金約96万円病院での一定期間の勤務

給付金で約55万円が戻り、奨学金2本の条件を全て満たした場合、実質的な学費の自己負担はほぼゼロになりました。

ただし、これはあくまで学費の話です。在学中は働けない時間が増えるため、生活費は別途かかります。家賃・食費・交通費など、学費とは別に毎月の生活コストをどう賄うかを、入学前にしっかり計画しておくことが大切です。私自身、正看護師学校時代は奨学金と給付金で学費を賄いましたが、生活費については妻の収入に支えてもらった部分がありました。

これらの条件を一つでも満たせない場合は、返済義務が生じます。申し込み前に条件を十分に確認してください。

  • 専門実践教育訓練給付金の対象講座に通っていること
  • 卒業後に資格を取得し、1年以内に就職していること
  • 市の奨学金の居住・勤務要件を満たし続けること
  • 病院の奨学金のお礼奉公期間を全うすること

まとめ

お金がないから看護師になれない、と思っている方に伝えたいことがあります。

制度を知っているかどうかで、人生が変わります。

私の准看護師学校時代は、アルバイトと貯蓄と家族の支えで乗り切りました。正看護師学校では、制度をフル活用してアルバイトなしで学業に集中できました。同じ人間が歩んだ2つの時代でも、知識と準備の差でこれだけ違いが生まれます。

クラスには、子どもを育てながら通っていたシングルマザーの仲間もいました。それぞれが制度を活用し、助け合いながら学んでいました。どんな状況にあっても、諦める前に一度、使える制度を調べてみてほしいと思います。

ただし、制度には条件があります。内容をしっかり理解してから申し込むことが、後悔しない選択につながります。

どんな道を通ってきても、学びはたくさんあります。資格取得はゴールではなく通過点です。遠回りに見えるプロセスの中にこそ、その人だけの財産が生まれます。

「知らなかっただけで、諦めなくていい」

まず一歩、ハローワークか学校に相談してみてください。


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