准看護師学校を選んだ理由|介護士の私が正看ではなく准看にした話
介護士から看護師を目指そうと決めたとき、最初にぶつかる壁があります。
「准看護師学校にするか、正看護師学校にするか」
この記事では、介護福祉士として老健で6年働いた後に准看護師学校を選んだ私が、その理由を正直に話します。きれいごとなしの本音です。
正看護師学校という選択肢はあったのか
看護師への憧れが、全くなかったわけではありません。
でも当時の私にとって、看護師はまるで雲の上の存在でした。「自分のような人間が看護師を目指すのはおこがましい」そんな気持ちが正直ありました。今思えば、医療福祉の世界のヒエラルキーに、無意識のうちに組み込まれていたのだと思います。あの頃の自分に言ってやりたいです。「そんなことはないよ」と。
では現実的な話として、働きながら正看護師学校に通うことはできなかったのか。
結論から言うと、私の状況ではほぼ不可能でした。正看護師の全日制学校は平日の日中に授業があります。介護福祉士として働きながら通える仕組みではありません。私が所属していた老健の母体病院には、病院に所属しながら准看護師学校に通う制度、あるいは准看護師の資格を持った人が正看護師学校に通う制度がありました。しかし介護福祉士のまま、正看護師学校に病院所属で通う道はありませんでした。
経済的な現実もありました。老健で6年間、一生懸命働きました。でも貯めた貯蓄を計算したとき、愕然としました。仕事をやめて全日制の看護師学校に通うには、学費も生活費も、とても足りなかったのです。6年間頑張ってきたのに、その基盤にもなれなかった。正直、情けなかったです。介護士の給与では、看護師学校への進学資金を貯めることが難しいのが現実です。私もそのひとりでした。
「選んだ」というより、「選ばざるを得なかった」というのが、より真実に近いかもしれません。
それでも准看護師学校を選んだ理由
とはいえ、准看護師学校を選んだことに後ろ向きな気持ちはありませんでした。それには理由があります。
働きながら通える唯一の現実的な選択肢だった
准看護師学校は午後から授業が始まります。私が通っていた学校は14時頃から17時頃まででした。午前中に家事をこなし、午後から学校へ。夕方から深夜までグループホームで夜勤のアルバイト。これが当時の私の日常でした。体力的にはきつかったですが、午後始業という仕組みが本当に助かりました。
尊敬する看護師さんが歩んだ道だった
老健で働いていたとき、私が最も尊敬していた看護師さんがいました。
その方も、准看護師から正看護師へと段階を踏んできたキャリアの持ち主でした。利用者さんの話を聞くのがとても上手で、おそらく人の話を聞くことが心から好きなのだと思います。共感能力が高く、話していると、自分でも気づかないうちに思った以上のことを引き出されてしまうのです。
その方と話していると、言葉の端々から、この人はいろいろな苦労をしてきたんだろうなと感じました。だからこそ、辛い人やしんどい人の気持ちがわかる看護師になれたのだと思いました。私もそのような人になりたい。そう強く思ったことを今でも覚えています。
尊敬するその方が通ってきた道です。及ばなくてもいい、少しでも近づきたい。そう思えたから、准看護師学校という選択に迷いはありませんでした。
准看護師学校時代のリアルな日常
学校が午後からとはいえ、生活はなかなかハードでした。
夕方に学校が終わると、グループホームの夜勤アルバイトへ向かいます。終わるのは日付が変わる頃。帰宅して眠り、やや遅めに起きると、妻はすでに仕事に出ています。掃除、洗濯、妻の夕食の準備。そうこうしているうちに午後になり、また学校へ。その繰り返しでした。
そして、この時期に今の妻と結婚しました。学校在学中のある日、クラスで自己紹介の機会がありました。私はこう言いました。「今の私の職業は、ヒモです」。クラスは大受けでした。笑えない話ですが、それが当時の現実でした。妻には今も頭が上がりません。
「子どもがいたら、とても挑戦できなかったかもしれない」と思っていました。
しかし、ここで必ず書き添えなければならないことがあります。准看護師学校から正看護師学校まで、一緒に学んだ同期の中に、シングルマザーが2人いました。詳しい事情は知りません。でも彼女たちは実際に、正看護師学校まで卒業し、看護師になりました。子どもを育てながら、学校に通い、試験勉強をして、それをやり遂げた。ただただ頭が下がります。子どもがいても、挑戦し、成し遂げた人がいる。このことは忘れてはならないと思っています。
妻の支援がなければ、正看護師学校へ進む経済的な基盤は整いませんでした。妻がいなければ、今の自分はいない。感謝してもしきれない存在です。
なぜ准看護師のまま働かず、正看護師学校へ進んだのか
私の職場に、准看護師学校時代の同期がいます。彼は准看護師として臨床経験を積み、今は通信課程で正看護師を目指しています。同じスタートラインに立っていた仲間が、別の道を選んだのです。
では私はなぜ、准看護師として働く道を選ばなかったのか。
正直に言います。一番大きかったのはお金の問題でした。准看護師として働き始めたとしても、当時の私には正看護師学校に通い直すための学費を自力で貯める余裕はありませんでした。妻が支えてくれる今しかない。そう思ったのです。
それに加えて、准看護師学校で勉強するうちに、看護というものがどんどん面白くなってきたこともあります。もっと勉強したい。その気持ちが自然と芽生えていました。
さらに、先生からある話を聞いたことも決め手になりました。正看護師学校では「病態関連図」というものを学ぶと教えてもらいました。准看護師学校ではやらない内容です。病態関連図を学ぶことで、より専門性の高いアセスメントができるようになる。私が理想としていた看護師像に、一歩近づけると感じました。
今振り返って、後悔はあるか
全くありません。
准看護師学校を選ばなければ、今の自分はいませんでした。遠回りに見えたキャリアの一つひとつが、今の自分をつくっています。その道筋を否定することは、今の自分を否定することになると思っています。
准看護師学校時代の仲間は、今も私の人生を支えてくれています。同期の一人は、今まさに同じ職場で一緒に働いています。もう一人は、今の精神科病院を紹介してくれた人です。なんとありがたいことでしょう。
たとえ目指す目的への道が少々遠回りになったとしても、その道の中には必ず何かがあります。
もし今、准看護師学校か正看護師学校かで迷っているあなたへ
どちらが正解かは、あなたの状況によって違います。
でも「准看護師学校しか選べない」と思っているなら、それは決して負けではありません。私がそうでした。選ばざるを得なかった道が、今の私をつくりました。
その道を歩んだ先に、何があるかはわかりません。でも必ず、何かがあります。